第1四半期の経常収支黒字、13%増の19.6億ドル
2014/06/23
対GDP比率は3.1%に上昇(前年同期2.7%)
OFW送金が貿易赤字をカバーし経常黒字に
フィリピン中央銀行(BSP)は6月20日、2014年第1四半期(14年3月末)の国際総合収支を発表した。
フィリピンの貿易収支は慢性的赤字にもかかわらず、赤字額を大幅に上回る海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金により、経常収支は黒字というパターンが定着している。OFW送金の威力による経常収支の黒字継続がフィリピン経済の特色であり、景気の押し上げ要因となっている。また、フィリピン格付けの投資適格への引き上げの大きな要素でもある。
14年第1四半期の経常収支に黒字額は前年同期比13.2%増の19億6,100万米ドルに達した。経常収支黒字額対GNI比、対GDP比は2.5%、3.1%で、 ともに前年同期の2.2%、2.7% を上回った。海外フィリピン人就労者(OFW)送金など第二次所得収支の堅調な成長と貿易収支赤字削減の相乗効果が経常収支の黒字を継続させた。 OFWの送金は6.6%増の60億8,500万米ドルであった。
しかし、国際収支は、44億7,500万米ドルの赤字となり、前年同期の黒字から赤字に転落した。金融収支が30億5,800万米ドルの純流出となり、経常収支の19億6,100万米ドルの黒字を大きく上回ったことによる。金融収支の純流出は、証券投資及びその他投資が前年同期の純流入から純流出へ転じた結果である。
第1四半期の国際総合収支(単位:百万米ドル)
項目 | 2014年 | 2013年 | 伸び率(%) |
経常収支 | 1961 | 1732 | 13.2 |
資本移転等収支 | 26 | 26 | 0.6 |
金融収支(マイナス勘定) | 3058 | -2135 | 243.2 |
誤差脱漏 | -3404 | -2356 | -44.4 |
国際総合収支 | -4475 | 1537 | -391.2 |
世界経済成長は、日米など先進諸国の景気回復が順調なペースで進んでいるが、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和縮小などにより、金融市場の不安定さが増し、新興市場資産に対するリスク選好度が低下。フィリピンへの資本流入にも悪影響を与えた。その結果、第1四半期末の外貨準備高(GIR)は前期末に比べて4.3%減少し796億米ドル。これは輸入の11カ月分に相当する水準。また、原本ベース短期対外負債の約7.6倍、残存ベース短期対外負債の5.5倍に相当する水準である。
[国際総合収支発表について]
中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。
ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、6月19日に発表された2014年5月及び年初5カ月間の速報値。それによると、年初5カ月間は41億2,000万米ドルの赤字であった。しかし、上記のような積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期ベースである。
第1四半期の国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル)
項目 | 第1四半期 | ||
年 | 14年 | 13年 | 伸び率(%) |
貿易・サービス・第一次所得収支 | -3036 | -2870 | -5.8 |
貿易・サービス収支 | -3058 | -2719 | -12.5 |
貿易収支 | -4072 | -4158 | 2.1 |
対GNI比(%) | -5.2 | -5.3 | - |
対GDP比(%) | -6.4 | -6.4 | - |
輸出 | 10891 | 10218 | 6.6 |
輸入 | 14963 | 14377 | 4.1 |
サービス収支 | 1014 | 1439 | -29.6 |
第一次所得収支 | 22 | -151 | 114.4 |
第二次所得収支 | 4997 | 4603 | 8.6 |
経常収支 | 1961 | 1732 | 13.2 |
対GNI比(%) | 2.5 | 2.2 | - |
対GDP比(%) | 3.1 | 2.7 | - |
資本移転等収支 | 26 | 26 | 0.6 |
金融収支(マイナス勘定) | 3058 | -2135 | 243.2 |
直接投資 | -722 | -970 | 25.6 |
証券投資 | 2013 | -783 | 357.2 |
金融派生商品 | -19 | 49 | -138.7 |
その他投資 | 1785 | -431 | 514.4 |
誤差脱漏 | -3404 | -2356 | -44.4 |
国際総合収支 | -4475 | 1537 | -391.2 |
対GNI比(%) | -5.7 | 2.0 | - |
対GDP比(%) | -7.0 | 2.4 | - |
OFW送金額合計 | 6085 | 5709 | 6.6 |
うち銀行経由分 | 5478 | 5167 | 6.0 |
(出所:BSP資料より作成、注:13年は全て速報値)
[対外収支の長期的な動き]
国際総合収支は2005年以降黒字が定着、2010年に143億800万米ドル、対GNI比5.4%、対GDP比7.2%という史上最高の黒字を計上した。貿易収支の赤字をOFW送金が完全に埋め切り、経常収支や国際総合収支を黒字に維持するというパターンが定着している。経常収支は2003年から11年連続の黒字となっている。長期的かつ継続的な統計が入手不可能であるが、手許数値比較では2013年の経常収支黒字は史上最高水準となっている(14年6月20日のフィリピン中央銀行発表などより)。
フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)
年 | 03年 | 04年 | 05年 | 06年 | 07年 | 08年 | 09年 | 10年 | 11年 | 12年 | 13年 |
貿易・サービス収支 | -7814 | -7461 | -9113 | -6595 | -6142 | -11725 | -6728 | -8231 | -11492 | -12747 | -11704 |
対GNI比 | -7.6% | -6.6% | -7.0% | -4.3% | -3.3% | -5.3% | -3.0% | -3.1% | -3.9% | -4.3% | -3.6% |
対GDP比 | -9.3% | -8.2% | -8.8% | -5.4% | -4.1% | -6.8% | -4.0% | -4.1% | -5.1% | -5.3% | -4.3% |
経常収支 | 285 | 1625 | 1980 | 5341 | 7112 | 3627 | 9358 | 8922 | 7125 | 6949 | 9423 |
対GNI比 | 0.3% | 1.4% | 1.5% | 3.5% | 3.8% | 1.7% | 4.2% | 3.4% | 2.4% | 2.3% | 2.9% |
対GDP比 | 0.3% | 1.8% | 1.9% | 4.4% | 4.8% | 2.1% | 5.6% | 4.5% | 3.2% | 2.8% | 3.5% |
国際総合収支 | 115 | -280 | 2410 | 3769 | 8557 | 89 | 6421 | 14308 | 11400 | 9236 | 5085 |
対GNI比 | 0.1% | -0.2% | 1.9% | 2.5% | 4.6% | 0.0% | 2.9% | 5.4% | 3.8% | 3.1% | 1.6% |
対GDP比 | 0.1% | -0.3% | 2.3% | 3.1% | 5.7% | 0.1% | 3.8% | 7.2% | 5.1% | 3.7% | 1.9% |
(出所:中央銀行資料より作成 12年は改定値、13年は速報値)