日本、台風30号の国際緊急共同調査支援
2014/05/04
科学技術振興機構が日比協働11件を採択
台風30号は比観測史上最強の台風か?など
日本の科学技術振興機構(JST)は、フィリピン科学技術省(DOST)と協力して、2013年11月に発生し、フィリピンなどに大きな被害をもたらした台風第30号(フィリピン名:ヨランダ)に関連する11件の研究・調査課題を決定した。これは「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)」の一環として行われるものである。
J-RAPIDとは、日本あるいは国際的に重要性を持つ緊急対応が必要な事象に対し、海外の研究資金配分機関や研究機関と協働して行われる国際共同研究・調査を支援するプログラムである。JSTは、2011年に東日本大震災が発生した際に、至急取り組む必要がある研究や調査、特に海外研究者と協働して行われる国際共同研究・調査を支援するためのプログラムとしてJ-RAPIDを立ち上げ、地震・津波防災、建築・土木、原子力・放射線安全などの分野でアメリカやフランスを含む4ヵ国とそれぞれ協力する課題を支援した。
今回、台風発生の数週間後からDOSTと調整を始め、今年2月17日に共同研究や調査課題の募集を開始した。3月28日の締め切りまでに、日本とフィリピンの大学、研究機関から25件の応募があり、11件の研究・調査課題の支援を決定した。支援期間は半年~1年で1課題あたり300万円程度を支援する。その11件は以下のとおり。
1.台風30号のフィリピン・ビサヤス地方における住民生活基盤と生態系への影響調査
2.台風ヨランダによる高潮災害の根源的検証と災害リスク軽減のための工学・社会科学融合研究
3.レイテ島および他地域における災害に対する学校の準備、対応、復興能力強化に関する研究
4.巨大台風と大規模高潮による災害廃棄物の合理的応急処理と環境と調和した持続可能な管理方法
5.台風30号によるフィリピン中部沿岸域の有害化学物質汚染に関する緊急環境調査
6.台風30号による強風・豪雨・高潮の複合災害の広域被害把握とマッピング
7 フィリピンの災害対応を目的とする地理空間情報シェアリングシステムのプロトタイプの開発
8.台風ヨランダの強風被害原因の究明に基づく効果的な被害低減策の策定と復旧への反映
9.台風30号はフィリピンでの観測史上最強の台風だったか?
10.フィリピン台風30号の心理社会的側面への影響に関する実態調査
11.被災公的文書等法的基盤保全のための科学技術的修復方法の調査研究と社会文化的評価
なお、JSTがJ-RAPIDを発動するのは、世界的に稀有な災害で、社会的・経済的影響が大きく、緊急の取り組みが必要と判断した場合とし、主として以下のいずれかの緊急性を有する研究・調査を支援対象とする。
・時間の経過とともに消失する恐れがあり将来取得することが難しくなるなど、データ取得に関する緊急性(例えば、津波被害の痕跡調査、汚染発生直後の初期分布の計測)
・問題解決の緊急性(例えば、感染症のアウトブレイクのように社会的影響が大きく対策に緊急性を有する場合)
これまでに実施されたJ-RAPID課題はそれぞれ、観測データの提供や災害復旧対策 の提言、研究ネットワークの形成など、本格研究や調査、災害復興、防災対策に貢献している。JSTは今後も必要に応じ迅速にJ-RAPIDを発動し、科学技術的に貴重な情報の確保、災害からの速やかな復旧、将来の防災力の向上などに資する研究調査活動を支援する方針である(14年4月28日の科学技術振興機構のプレスリリースより)。