13年の経常収支、11年連続の黒字に

2014/03/23

36%増の94億ドルで史上最高水準
対GDP比率3.5%へ上昇(前年2.8%)
OFW送金の威力、比経済の強さに

 

フィリピン中央銀行(BSP)は3月21日、2013年第4四半期(13年12月末)及び通年(13年1~12月)の国際総合収支を発表した。

 フィリピンの貿易収支は慢性的赤字にもかかわらず、赤字額を大幅に上回る海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金により、経常収支は黒字というパターンが定着している。OFW送金の威力による経常収支の黒字継続がフィリピン経済の特色であり、景気の押し上げ要因となっている。また、フィリピン格付けの投資適格への引き上げの大きな要素でもある。

 [2013年第4四半期の国際総合収支動向]
 13年第4四半期の国際収支は、経常収支の黒字に下支えされ、12億6,000万米ドルの黒字を維持したが、前年同期(34億0,500万米ドルの黒字)から大幅に黒字が縮小した。経常収支は前年同期比21.8%増の36億9,600万米ドルの黒字対GNI比、対GDP比は4.2%、5.0%で、ともに前年同期の3.6%、4.2% を上回った。海外フィリピン人就労者(OFW)送金など第二次所得収支の堅調な成長と物の貿易収支の赤字削減の相乗効果が経常収支の黒字化に寄与した。OFWの現金送金は8.8%増の63億3,100万米ドルに達した。一方、第一次所得収支は1億2,700万米ドルの黒字であったが、前年同期に比べ7割も黒字が縮小。主に投資収益の純支払増加が影響した。

  国際総合収支の継続的黒字などにより、第4四半期末の外貨準備高(GIR)は前年同期末比0.7%減の832億米ドル。これは輸入の11.5カ月分に相当する水準。また、原本ベース短期対外負債の約7.4倍、残存ベース短期対外負債の5.4倍に相当する水準である。

 [2013年の国際総合収支動向]
 通年の経常収支の黒字は前年比35.6%増の94億2,300万米ドルと大幅増。対GNI比、対GDP比は2.9%、3.5%でそれぞれ前年の2.3%、2.8%を上回った。モノの貿易赤字が2.1%縮小したうえ、OFW現金送金が7.4%増の229億6,800万米ドルと拡大し経常収支の黒字を下支えした。

 国際総合収支(BOP)は50億8,500万米ドルの黒字となった。前年より44.9%縮小したが、経常収支の黒字、S&Pやフィッチ、ムーディズなど国際格付け機関の信用格付け引き上げを背景にした金融収支黒字により、国際総合収支(BOP)も黒字を継続した。


 [国際総合収支発表について]
 中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。

 ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、3月19日に発表された2014年2月及び年初2カ月間の速報値。それによると、年初2カ月間は41億3,500万米ドルの赤字であった。しかし、上記のような積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期ベースである。


 第4四半期及び年間の国際総合収支内訳(単位:百万米ドル)

項目 第4四半期 1~12月
13年 12年 伸び率(%) 13年 12年 伸び率(%)
経常収支 3696 3034 21.8 9423 6949 35.6
 対GNI比(%) 4.2 3.6 - 2.9 2.3 -
 対GDP比(%) 5.0 4.2 - 3.5 2.8 -
 
貿易・サービス・第一次所得収支 -2725 -2278 -19.6% -11958 -12550 4.7
 貿易・サービス収支 -2852 -2737 -4.2% -11704 -12747 8.2
    対GNI比(%) -3.2 -3.2 - -3.6 -4.3  
    対GDP比(%) -3.8 -3.8 - -4.3 -5.1  
     輸出 17568 17102 2.7 66526 66823 -0.4
     輸入 20421 19839 2.9 78230 79571 -1.7
    貿易収支 -4424 -5201 14.9 -18525 -18926 2.1
    サービス収支 1571 2463 -36.2 6821 6179 10.4
   第一次所得収支 127 459 -72.3 -254 197 -228.6
 
第二次所得収支 6422 5312 20.9 21381 19500 9.6
 
資本収支   27 26 5.0 115 95 21.8
金融収支    1585 -3026 152.4 635 -6748 109.4
 直接投資 168 525 -68.0 -218 958 -122.7
 証券投資 948 -877 208.2 -1325 -3205 58.7
 金融派生商品 -47 26 -276.1 -88 -14 -543.3
 その他投資 515 -2701 119.1 2266 -4487 150.5
 
誤差脱漏(ネットベース) -878 -2681 67.2 -3818 -4556 16.2
 
国際総合収支 1260 3405 -63.0 5085 9236 -44.9
 対GNI比(%) 1.4 4.0 - 1.6 3.1 -
 対GDP比(%) 1.7 4.7 - 1.9 3.7 -
 
OFW送金額合計 7010 6304 11.2 25351 23352 8.6
 うち銀行経由分 6331 5820 8.8 22968 21391 7.4

(出所:BSP資料より作成、注:13年は全て速報値)

 [対外収支の長期的な動き]
 国際総合収支は2005年以降黒字が定着、2010年に143億800万米ドル、対GNI比5.4%、対GDP比7.2%という史上最高の黒字を計上した。貿易収支の赤字をOFW送金が完全に埋め切り、経常収支や国際総合収支を黒字に維持するというパターンが定着している。経常収支は2003年から11年連続の黒字となっている。長期的かつ継続的な統計が入手不可能であるが、手許数値比較では2013年の黒字は史上最高水準となっている(14年3月21日のフィリピン中央銀行発表より)。


フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)  

02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年  12年 13年
貿易・サービス収支 -7532 -7814 -7461 -9113 -6595 -6142 -11725 -6728 -8231 -11690 -12747 -11704
 対GNI比 -7.8% -7.6% -6.6% -7.0% -4.3% -3.3% -5.3% -3.0% -3.1% -3.9% -4.3% -3.6%
 対GDP比 -9.3% -9.3% -8.2% -8.8% -5.4% -4.1% -6.8% -4.0% -4.1% -5.2% -5.3% -4.3%
経常収支 -282 285 1625 1980 5341 7112 3627 9358 8922 6970 6949 9423
 対GNI比 -0.3% 0.3% 1.4% 1.5% 3.5% 3.8% 1.7% 4.2% 3.4% 2.3% 2.3% 2.9%
 対GDP比 -0.3% 0.3% 1.8% 1.9% 4.4% 4.8% 2.1% 5.6% 4.5% 3.1% 2.8% 3.5%
国際総合収支 810 115 -280 2410 3769 8557 89 6421 14308 11400 9236 5085
 対GNI比 0.8% 0.1% -0.2% 1.9% 2.5% 4.6% 0.0% 2.9% 5.4% 3.8% 3.1% 1.6%
 対GDP比 1.0% 0.1% -0.3% 2.3% 3.1% 5.7% 0.1% 3.8% 7.2% 5.1% 3.7% 1.9%

(出所:中央銀行資料より作成 12年は改定値、13年は速報値、2010年以前の数字はBPM5ベース)