JICA、500億円の対フィリピン借款調印

2014/03/20

災害リスク軽減や復旧資金需要を支援
初の「災害復旧スタンドバイ借款」供与

 

国際協力機構(JICA)は、3月19日、フィリピン政府との間で、500億円を限度とする「災害復旧スタンドバイ借款」の円借款貸付契約に調印した。この借款の償還期間は40年、据置期間が10年間、調達条件は一般アンタイド、事業実施機関はフィリピン財務省である

 

 

 この借款はJICAにとって、災害後の復旧における資金ニーズに迅速に対応するため、あらかじめ借款契約を締結し、準備をしておく「災害復旧スタンドバイ借款」の初めての供与となる。

 フィリピンは東南アジアにおいて最も自然災害の多い国の一つである。ほぼ毎年発生する災害による経済的、人的被害は甚大であり、また、社会基盤への度重なる被害は経済活動へ長期的な影響を与えている。具体的には2009年9月には熱帯暴風雨オンドイ、および台風ぺペンがルソン島中・北部を直撃し、2011年12月には熱帯暴風雨センドン、2012年12月には台風パブロがミンダナオ地域を襲っていまる。直近では、2013年11月に台風ヨランダがレイテ島、サマール島、セブ島、パナイ島、ボホール島、ネグロス島等を直撃し、死者6,000人以上という甚大な被害が生じた。

 それぞれの被災時にはフィリピン政府によって国家災害宣言 が出されている。今後は気候変動の影響を受け、より強力な台風の発生や沿岸部の海面上昇による災害規模の深刻化も懸念されており、災害リスクへの対応はフィリピン政府における喫緊の課題となっている。

 フィリピン政府は、こうした状況に対し、(1)国家災害リスク軽減・管理計画の策定および自治体の能力強化、(2)統合的水資源管理の導入、(3)災害リスク軽減・管理に係る情報マネジメントといった政策を掲げ、災害リスク軽減・管理能力の向上を図っている。

 今回の借款は、このようなフィリピンの政策アクションの実施を支援し、大規模災害発生時に生じる一時的な資金ニーズに応え、迅速な復旧を支援し、同国の災害リスク軽減・管理能力を強化するものである。

 なお、JICAはフィリピンの災害リスク・軽減管理分野では上記の(1)~(3)の分野に対し、1970年から40年以上にわたり、有償資金協力(円借款)、無償資金協力、技術協力の3スキームを活用した支援を続けている。それぞれが、本事業により支援する政策アクションの実施促進に関連しており、現在、(1)国家災害リスク軽減・管理計画の策定および自治体の能力強化に対しては、「災害リスク軽減・管理能力強化プロジェクト(2012~2015年、技術協力プロジェクト)」および「災害リスク管理アドバイザー(個別専門家)」により支援しています。また、(2)統合的水資源管理の導入に対しては、「総合治水アドバイザー専門家派遣(個別専門家)」により支援している。

 JICAは今後とも、有償資金協力(円借款)、無償資金協力や技術協力などの多様なODAスキームの連携を強化しながら、フィリピンの開発課題に対して機動的に取り組んでいく方針である(14年3月20日の国際協力機構ニュースリリースより)。