フィリピンからの麻疹(はしか)流入、さらに増加

2014/03/09

日本の診断報告の34%、輸入国別シェア81%に

 

日本における麻疹(はしか)の感染再増加傾向が強まっている。



 国立感染症研究所感染症疫学センターによると、日本において2014年第1~8週(2013年12月30日~2014年2月23日)に診断された麻疹累積報告数は、前年同期比3.3倍の119例へと急増している。

 2013年第48週~2014年第8週(2013年11月25日~2014年2月23日)に診断された麻しん(2014年3月4日集計)は139例であり、前年同時期の48例の2.9倍であった。性別では男性73例、女性66例であり、平均年齢は15.2歳(中央値11歳、4カ月~51歳)であった。2014年第8週には麻しん脳炎が1例報告された。遺伝子型別が判明したものが75例含まれ、B3型72例、D8型2例、D9型1例であった。


 この間の感染地域は日本国内が90例(65%)、国内または国外(フィリピン)が1例(1%)、不明1例(1%)であり、国外が47例(34%:フィリピン38例、インドネシア、スリランカ各2例、インド、オーストラリア、グアム、米国、ベトナム/マレーシア各1例)と報告され、フィリピンが最多であった(輸入国別シェア81%)。ワクチン接種歴別報告数では、139例中接種歴のない、または不明の症例が114例(82%)であった。

 このように、日本での麻しん報告数は2013年第48週以降増加傾向が続いている。2014年第4週までは海外からの輸入症例の割合が高かったが、その後国内感染例の割合が高い。感染地として海外が推定されていた症例の、2013年第1~47週の割合は7.6%(16/210)であったが、2013年第48週~2014年第4週では41%(28/68)に増加し、2014年第5~8週は27%(19/71)と低下した。これは、一旦輸入例として入ってきた麻しんウイルスが、地域によっては国内流行しつつあることを示唆しており、憂慮される状況である。医療機関内での感染が疑われる症例が、少なくとも7例報告されている。

 麻しんは、年齢にかかわらず命に関わる重篤な感染症である。また、特異的な治療法はないものの、予防接種で予防可能な感染症である。我が国は2012年までの麻しん排除を国としての目標に掲げ、2007~2008年頃の10代を中心とする患者発生の状況から約97%の減少を達成し、2015年の麻しん排除認定の取得を次の目標としている。

 今後も海外からの輸入例への監視を行うと共に、輸入例からの国内高次感染に対する警戒が重要である。そのためには、迅速な疫学調査の実施が鍵であるとともに、感受性者、特に定期接種(1歳、小学校就学前1年間)対象者における麻しん含有ワクチン(原則として麻しん風しん混合ワクチン)接種の徹底が必要である。

 また、医療従事者や教育・福祉関係者において、2回の麻しん風しん混合ワクチン接種を受けていない者においては、自身の生命の危険を回避するためにも、任意接種であってもワクチン接種の実施が推奨される。

 海外への渡航者は、自分のワクチン接種歴を確認の上、必要なワクチン接種を行い、麻しんウイルス(混合ワクチンにより風しんウイルスも)を日本へ持ち込まないことが大切である。

 今後は、医療機関における発熱・発疹者に対する聞き取りの工夫として、フィリピンなど麻しんが発生している国への渡航歴や麻しん様患者との接触歴、予防接種歴などの確認を慎重に行うことが望まれるのみならず、国内で麻しん患者の報告がある地域においては特に、医療機関における院内感染対策の徹底が重要である。

 空気感染によって伝播し、重症度も高いがワクチンにより予防可能な麻しんが、再び日本国内で流行しつつあることへの厳重な警戒が必要な状況である(14年3月7日の国立感染症研究所感染症疫学センター麻疹発生動向発表より)。