フィリピンでの事業拡大意欲は低水準

2014/03/04

インフラや関連産業の未発達等がネック
ASEANへの関心は急上昇、シフト活発化
ジェトロが海外事業展開調査結果発表

 

 2月27日に日本貿易振興機構(ジェトロ)は、2013年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査結果を発表した。

 ジェトロは2013年11~12月にかけて、ジェトロのサービス利用実績があり、海外ビジネスに関心の高い日本企業(本社)9,800社に対し、海外ビジネスへの取り組みに関するアンケート調査(ジェトロ海外ビジネス調査)を実施した(有効回答数3,471社〔うち中小企業は2,791社〕、回答率35.4%)。

 円高修正や国内景気回復の流れにも関わらず、日本企業の海外事業展開に対する意欲は引き続き高い水準にある。輸出の拡大に積極的な企業の割合が増加をみせたほか、海外進出(新規投資、既存拠点の拡充)についても、依然として6割超の企業が拡大を志向している。海外事業展開先では、中国に対する様子見の姿勢とASEANへのシフトが鮮明となってきている。 調査結果の概要は以下の通り。

(1)輸出:中小企業でより鮮明な輸出拡大への意欲

(2)海外進出:海外進出意欲は高水準、ASEANシフトが鮮明に
・今後、海外進出の拡大を図る国・地域としては、12年以降、全体としてASEANを挙げる割合が中国を上回った(機能別では販売と汎用品生産)。13年には、高付加価値品の生産でもASEANが中国を逆転。なお、国・地域別では中国(57.0%)、タイ(47.1%)、インドネシア(35.1%)、ベト ナム(29.6%)の順となっている。
・国内外拠点・機能の再編では、ASEANへの移管が移管件数全体の46.2%を占める。国・地域パターンでは、「日本→ASEAN」への移管が最多(24.2%)。中国からの移管では、半数(52.2%)がASEANを移管先に選んだ。
・拠点・機能の再編動向を経年で比較すると、中国からの移管比率が増加傾向(06年度8.6%→10年度16.4%→13年度21.9%)にある。移管先では、中国が減少傾向にある一方で(49.4%→32.8%→22.9%)、ASEANの比率が増加傾向(30.0%→33.6%→44.5%)。

(3)有望市場:市場としてもASEANシフトが鮮明に
 日本企業にとっての有望市場を5年前と比べると、ASEAN諸国を挙げる回答の比率上昇が顕著(タイ、インドネシア、中国、ベトナムの順)。中国を有望 視する割合は1.1ポイント減の51.3%へと低下。半数を超えて依然高いが、ASEANシフトが鮮明に。

(4)中国ビジネス:不透明さ増すも、市場としての重要性は維持
・中国での「ビジネスリスクが高まった」とする回答は、13年8月時点より上昇したが、反日デモ直後の13年1月時点よりは低下 (69.8%→52.2%→59.3%)。一方、ビジネスへの影響については「影響はない」との見方が41.7%に拡大。
・今後、「既存ビジネスの拡充、新規ビジネスを検討する」割合は、過去最低の水準(54.6%)に低下。「まだ分からない」との回答が過去最大の15.6%に。
・中国ビジネスを拡大・維持する最大の理由は、「中国の市場規模、成長性」(73.0%)が依然として首位。中国ビジネスの縮小・撤退を検討する最大の理 由は「生産コストなど製造面で他国・地域より劣る」が首位に浮上(49.3%)。「カントリーリスクの高さ」は低下(60.0%→42.3%)。

(5)新興国ビジネス環境:新興国ビジネスはリスクへの留意を
・新興国のビジネス環境上の魅力・長所としては、全ての対象国で「市場規模・成長性」が最多。アジアでは人件費の高騰が指摘されるものの、「人件費の安さ、豊富な労働力」への評価も依然としてある。
?新興国でのビジネスリスクについて、中国は「政情リスク」、「知的財産」、「人件費」など9項目で回答率が20%を超えた。「インフラ」「法制度」「政情リスク」は、多くの新興国で問題点として挙げられている。
・新興国のビジネスリスクについて、前年度調査との比較では、「為替リスク」への認識が全般に高まる。中国は、「為替リスク」「人件費」「環境汚染」について、前年度調査との比較で、リスク認識が高まる。

(6)自由貿易協定(FTA):FTAの活用が進む
・日本の発効済FTA利用率(輸出入)は年々上昇(42.9%)。他方、第三国間で締結されたFTAについては、タイ・インド、AFTA、ASEAN・イ ンドの順に利用率が高い。インドを締約国とするFTAが多く活用されていることが特徴。

 ASEAN全体への関心・注目度が高まる中で、フィ リピンに対する関心度は依然高くない。今後(3年程度)に海外で拡大する国・地域という質問(全産業対象、以下同様)に対する回答(複数回答)において、 フィリピンは10.9%(20カ国中13位)にとどまっている。機能に関しては販売機能で7.1%(13位)、生産(汎用品)で2.1%(12位)、生産 (高付加価値品)で1.3%(12位)、物流機能で0.9%(11位)、新製品開発機能で0.4%(13位)、地域統括機能で0.3%(12位)という、 いずれも二桁台の順位であった。数年前から多少上昇傾向にあるが、タイ、ベトナム、インドネシアなどと比べるとかなり見劣りがする

 一方、新興国13カ国(のビジネス上のリスク・問題点という質問では、フィリピンに対する懸念は依然高い。フィリピンは、「自然災害リスク」の回答比率が第3位(回答率23.6%)、「関連産業が未発達・未集積」が第4位(回答率11.6%)、「インフラが未整備」で第6位(同31.4%)などで上位にランクされている。

 詳細はジェトロのウエブサイト(http://www.jetro.go.jp/news/releases/20140227288-news)で閲覧可能である(14年2月27日の日本貿易振興機構プレスリリースより)