フィリピンからの麻疹(はしか)輸入例が大幅増加
2014/02/15
日本の診断報告の37%、再感染も、輸入シェア71%
日本における麻疹(はしか)の感染が再増加傾向にある。
国立感染症研究所感染症疫学センターによると、日本において2014年第1~4週(2013年12月30日~2014年1月26日)に診断された麻疹累積報告数は46例で、前年同時期の14例から約3.3倍へと急増した。麻疹ウイルスの遺伝子型は16例で報告されている。
また、2013年第48週~2014年第4週(2013年11月25日~2014年1月26日)までの約2カ月間に診断された麻疹(2月3日現在)は61例であり、前年同時期の26例から2.3倍と大幅増加となっている。性別では男性32例、女性29例であり、平均年齢は17.0歳(中央値15歳、5カ月~60歳)であった。
この間の都道府県別の報告数は京都府21例、愛知県8例、神奈川県7例、東京都5例、岡山県3例、埼玉県、千葉県、兵庫県、広島県、福岡県各2例、新潟県、静岡県、三重県、滋賀県、大阪府、山口県、宮崎県1例であった。ワクチン接種歴別報告数では、61例中接種歴のない、または不明の症例が52例(85%)であった。遺伝子型別が判明したものが24例含まれ、B3型22例、D8型1例、D9型1例であった
感染地域は日本国内が37例(61%)であり、国外(輸入)が24例(39%:フィリピン17例、スリランカ2例、インドネシア2例、グアム1例、インド1例、オーストラリア1例)と報告され、フィリピンが最多で輸入全体の71%を占めている。また、日本における全感染(46例)の37%を占めている。
フィリピンからの輸入例は、2013年第48~52週(11月25日~12月29日)が3例、2014年第1~4週が14例と、特に今年に入っての急増ぶりが目立つ。フィリピンからの輸入例17例のうち16例がB3型である。現在、日本で感染で多くを占めているのはB3型であり、フィリピンで感染した人からの再感染も広がりつつあるといえよう。
このように、2013年末から2014年初頭の日本での発生動向で特記すべきこととして、輸入例の増加が続いていることが挙げられる。感染地として海外が推定されていた症例の、2013年第1~47週の週当たり平均報告数は0.32例であったが、2013年第48週~2014年第4週では2.7例に増加した。
麻疹は、年齢にかかわらず命に関わる重篤な感染症である。また、特異的な治療法はないものの、予防接種で予防可能な感染症である。日本は2012年までの麻疹排除を国としての目標に掲げ、2007~2008年頃の10代を中心とする患者発生の状況から約97%の減少を達成し、 2015年の麻疹排除認定の取得を次の目標としている。
今後も輸入例の動向を注意深く監視すると共に、輸入例からの国内二次感染等に対する警戒が重要であるとされている。そのためには、「一例出たらすぐ対応」の原則に則った迅速な疫学調査の実施が鍵であるとともに、感受性者、特に定期接種(1歳、小学校就学前1年間)対象者における麻疹含有ワクチン(原則として麻疹・風疹混合ワクチン)接種の徹底が必要であるとされている。
さらに、海外渡航歴のある、あるいは関連している症例が増加しており、感染性がある期間に航空機に搭乗していたと考えられた症例も複数報告されている。海外への渡航者は、自分のワクチン接種歴を確認の上、必要なワクチン接種を行い、持ち込まないことが大切であるとのことでもある(14年2月12日の国立感染症研究所感染症疫学センター麻疹発生動向発表より)。