フィリピンの財閥企業、業績総じて好調

2013/12/27

利益トップはSM、収入はサンミゲル断トツ
GTキャピタル55%増益、安定度ではアヤラ

 

 フィリピン証券取引所(PSE)に上場されている財閥系持株会社の2013年度9カ月(1月~9月)の決算が出揃った。


 フィリピン経済の好調を背景に、下表のとおり、財閥系持株会社の業績が総じて好調に推移している。為替差損により減益となった企業もあるが、為替差損など一時的要因を除いた実質ベースでは二桁増益の企業が多い。9カ月間の純利益ではヘンリー・シー氏傘下のSMインベストメンツが263億ペソ(報告ベース)で首位、収入面では、電力や石油企業を傘下に収めているサンミゲルが5,426億ペソで断トツであった。

 増益率(報告純利益ベース)が高かったのは、トヨタ・モーター・フィリピン(TMPC)などを子会社化したGTキャピタル(メトロバンク・グループ)の 55%増益、カジノ事業が戦力化しつつあるアンドリュー・タン氏傘下のアライアンス・グローバル(AGI)の42%増益、85億ペソの株式売却益を計上し たDMCI(コンスンヒ・ファミリー)の42%増益であった。

 一方、サンミゲルが31%減益、JGサミット(ゴコンウェイ・ファミリー)が14%減益となったが、双方とも、巨額の為替損失が響いた。為替損失など一時的要因を除いたコア利益ベース、すなわち実質ベースでは、各々15%増益、20%増益であった。

 また、アボイティス・エクイティー・ベンチャー(AEV、アボイティス・ファミリー)は、主力の電力料金値下がりなどによる電力部門低調で減益となったが、その利益水準は203億ペソと依然高かった。LTグループ(ルシオ・タン氏グループ)は煙草・酒税の大幅増税が響いた結果となったが、昨年発足したばかりであり、まだ全勢力が結集されておらず発展途上にあるといえる。

 なお、ハウス・オブ・インベストメント(HI、ユーチェンコ・ファミリー)の純利益は21%増ながら16億ペソと低水準に見えるのは、リサール商業銀行 (RCBC)など主力の金融事業が含まれていないことによる。

 このような状況下で、フィリピンの顔ともいえるアヤラコープの総収入は前年同期比23%増の1,154億ペソ、報告純利益は同25%増の188億ペソ、一時的損益などを調整したコア純利益は同32%増の123億ペソ、すなわち実質32%増益決算であった。不動産、銀行、水道などのコア事業が安定成長を継続させたことなどで、引き続き好決算となった。安定度という点では抜きんでているといえる(各社の2013年第3四半期事業報告書などより)。

 

フィリピン財閥系上場持株会社の2013年度9カ月決算動向(単位:億ペソ)

企業名 グループ名など 収入 伸率 純利益 伸率 帰属利益 伸率 備考
SMインベストメンツ ヘンリー・シー 1,831 15% 263 14% 185 14% BDO大幅増益
AEV アボイティス 590 -3% 203 -11% 166 -8% 電力部門不振
AGI アンドリュー・タン 934 19% 193 42% 144 60% カジノ戦力化
アヤラコープ アヤラ 1,154 23% 188 25% 104 20% 実質32%増益
DMCI コンスンヒ 415 5% 187 42% 144 60% 売却益85億ペソ
サンミゲル コファンコ 5,426 7% 177 -31% 75 -75% 実質15%増益
JGサミット ゴコンウェイ 1,109 9% 133 -14% 84 -22% 実質20%増益
GTキャピタル ジョージ・テー 772 362% 106 55% 77 144% 比トヨタ子会社化
LTグループ ルシオ・タン 434 -1% 105 -4% 69 -18% 発展途上
FDC ゴティアヌン 256 24% 43 26% 28 18% 財務内容良好
HI ユーチェンコ 136 -11% 16 21% 10 36% RCBC含まず

(出所:各社の2013年第3四半期事業報告書などより作成)