日産自動車、フィリピンに再本格参入
2013/12/15
10億円で51%出資の新合弁会社設立
乗・商用車販売統合等でシェア回復へ
日産自動車(日産)がASEAN地域事業の大幅拡充に向けて動いている。
フィリピンにおいても、事業基盤再強化、販売シェア急回復を目指す。トップギア・フィリピン誌資料などによると、日産は、1982年に丸紅との合弁企業 ピリピナス・フィリピンを設立(その後日産モーター・フィリピン{NMPI}に社名変更)、翌年にスタンザの生産を開始した。
90年代の日産のフィリピンでの販売シェアは、1995年まではトヨタ、三菱自動車に次ぐ第3位であった。1995年の販売台数は1万8,729台、 1996年はホンダに抜かれたものの、1万9,104台を販売した。しかし、1997年に1万6,456台へ減少、その後はさらに減少傾向を辿り、 2000年には日産モーター・フィリピン(NMPI)の経営権は台湾の裕隆汽車(裕隆)へと移った。
そして、フィリピンでの日産の乗用車生産・販売は裕隆主導のNMPI、商用車生産・販売は現地企業ユニバーサル・モーター・コロンビア(UMC)へと二 分されるに至った。現在、日産はMNPIに約5.4%出資しているだけで、UMCへは全く出資していない。すなわち、資本面では、フィリピンからはほぼ撤 退した状況となっている。
したがって、日産のフィリピンでの販売シェアは一段と低下傾向を辿り、2007年には韓国の現代自動車に4位の座を奪われた。また、いすゞやフォード等 にも抜かれ、2012年の販売台数はNMPIとUMC合計で僅か6,404台、シェアは3.5%にとどまった。2013年11カ月間でも合計約7,200 台で第7位にとどまっている。
このような状況下で、日産は12月12日に、「NMPIとUMCと共同で、合弁会社のフィリピン日産(NPI、本社:マニラ首都圏)を設立する」と発表 した。このNPIは、フィリピン市場を対象とした新たな販売会社として2014年の初旬に操業を開始、ブランド認知度の向上、シェア急回復を目指す。
NPIは、フィリピン国内のブランド、販売マーケティング戦略、そしてディーラー事業の強化を担い、商品ラインナップの拡充と販売・サービスの向上を通 じて、ブランド・パワーとセールス・パワーの向上を目指す。すなわち、販売に関しては、これまで二分されていた乗用車と商用車事業が統合され、顧客に幅広 い選択や利便性を提供することになる。
NPIの資本金は10億円(980万米ドル)で、出資比率は日産が51%、UMCとNMPIがそれぞれ24.5%となる。すなわち、販売面では、日産が 直接主導権を握ることになる。すなわち、日産がフィリピン市場に本格的に再参入するといえる。なお、UMCとNMPIはこれまで通り、フィリピン市場向け の日産車の生産を続ける。
NPIの内藤賢司社長は1985年に日産に入社、日本、ニュージーランド、南アフリカを含む様々な市場を担当してきている。2005年から2008年ま では、バイス・プレジデントとしてタイ日産自動車会社の経営企画室に在籍、その後、韓国日産株式会社のCEOを務めてきた。
なお、日産のアセアン地域中期計画においては、2016年度末までに、販売台数を現在の3倍に相当する50万台とし、市場シェア15%の達成を目指して いる。フィリピン市場は同計画の要として位置付けられており、NPIの設立は、同社の強い決意の証でもある(13年12月12日の日産自動車株式会社 ニュースリリースなどより)。