三菱東京UFJ銀行マニラ支店、経済・為替講演会
2013/10/28
今後1年間で1米ドル=41~44.50ペソで推移と予想
経済良好、米金融緩和縮小の影響限定的との見解
三菱東京UFJ銀行マニラ支店は、10月25日、首都圏マカティ市ドュシタニ・ホテルにおいて、毎年恒例の経済・為替関連講演会を開催した。
この講演は2部構成で、第1部が三菱UFJリサーチアンドコンサルティング執行役員調査本部長の五十嵐敬喜氏による「2014年内外経済の現状と展望」、第2部が三菱東京UFJ銀行マニラ支店為替資金課の善木茂雄課長による「フィリピン経済概況並びに今後のドルペソ為替相場見通し」という構成であった。
第一部担当の五十嵐氏は、日本経済新聞夕刊の「十字路」に定期寄稿、テレビ東京系の「ワールドビジネスサテライト」(平日23時~23時58分)のレギュラーコメンテーターを務めている。その他テレビ、新聞、経済雑誌への出演、寄稿、著書なども多い。
五十嵐氏は、「2012年までの5年間の円高は、世界的規模のリスク拡大下でのリスクオフ(リスク回避)という観点から、消去法的に、国債を中心とする日本円資産に資金が向かった結果である。しかし、現在は米国景気回復傾向、中国の景気失速回避観測、ユーロ圏最悪期脱却という世界的リスク縮小のなかでリスクオンの動きが顕在化、日本円への資金集中が終焉、すなわち急激な円高が終焉、短期的には緩やかなドル高の動きが予想される」と概括した。
ただし、「2012年11月後半以降の急激な円高と日本株上昇は実体の変化によるものではなく、アベノミクスへの先行期待や思惑によるものといえる。先行期待で株価は一時約8割も上昇したが、日本銀行が実際に異次元の金融緩和に着手した4月以降は、円も株価も一進一退の動きとなっている。消費税増税も控えており、需給ギャップ解消・デフレからの脱却はそれほど容易ではない」とも説明した。そして、「消費税増税分が政府負債削減に充当されないような場合には、予想外の望ましくない大幅な円安をもたらすことになろう」との見解も示した。
善木氏による第2部の「フィリピン経済概況並びに今後のドルペソ為替相場見通し」では、フィリピンの2013年上半期成長率は7.6%とアジア主要国で最高水準、低インフレ・低金利継続、外貨準備高が約830億ドルに拡大、OFW送金効果などで経常収支や国際総合収支が黒字維持、財政収支も改善傾向などファンダメンタルズが良好であること、その結果、世界の3大格付期間が揃ってフィリピンを投資適格へと格上げしたことなどが紹介された。
ペソ対米ドルレートは堅調なファンダメンタルズ、海外からの旺盛な資金流入により、2013年に入り、1米ドル=40ペソ台にまで上昇した。しかし、その後は中央銀行の介入で上値が重たくなり、5月頃からの米国金融緩和早期縮小懸念台頭(バーナンキ・ショック)にともなう新興国からの資金流出の動きでペソも反落、44ペソ台後半まで下落する場面も見られた。ただし、ファンダメンタルズ良好などにより、ペソの反落率はアジア他通貨などに比べ小幅にとどまった。
そのような状況下での今年度末から2014年度のペソ対米ドル相場予想に関して、1.中央銀行の介入によりペソ高の速度は緩やかになると思われるが、年末にかけて増加するOFW送金等により2013年末にかけて43ペソ台割れを目指す、2.米国が金融緩和縮小を開始した場合でも、既に相応の資金流出を経験した後であること、外貨準備高増加や経常収支黒字などを背景にペソ下落圧力は限定的、3.米国の景気回復が確認されるに従いリスクオン・モードが台頭、新興国通貨への流入も回復。景気減速に陥った場合でも、フィリピン政府による財政出動の余地は大きいとのメインシナリオや、以下のような期間別ペソ対米ドル相場予想が示された。
2013年10月央時点での三菱東京UFJ銀行マニラ支店の期間別ペソ対米ドル相場予想
・2013年第4四半期(10月~12月):1米ドル=42.50~43.80ペソ(年末にかけて43ペソ台割れトライ)
・2014年第1四半期(01月~03月):1米ドル=42.00~44.50ペソ(米金融緩和縮小開始(懸念)も持ちこたえ)
・2014年第2四半期(04月~06月):1米ドル=41.50~44.50ペソ(底固め)
・2014年第3四半期(07月~09月):1米ドル=41.00~44.30ペソ(ファンダメンタル見つつ上値追う)
・2014年第4四半期(10月~12月):1米ドル=41.00~44.30ペソ(ペソしっかり)
リスク要因としては、欧米化景気回復のもたつき、アベノミクスでのデフレ脱却期待の剥落、中国経済の急ブレーキにともなうリスクオフの動きが挙げられた(13年10月25日の三菱東京UFJ銀行マニラ支店講演会やその資料などより)。