マニラ首都圏水道料金争議、国際仲裁裁判所に
2013/10/06
アヤラ系に続き丸紅出資のマイニラッドも仲介選択
水道局の値下げ命令に不服、国際方式での解決へ
マニラ首都圏における水道料金改定問題で、大手水道2社とマニラ首都圏上下水道局(MWSS)との間で対立が深まっている。
この対立は、今年6月に水道2社が水道料金値上げを申請したのに対し、MWSSは9月12日にその値上げ申請を却下しただけでなく、5年間に及ぶ値下げ命令を発出したことにともなうものである。
首都圏西半分で上下水道事業を行っているマイニラッド・ウオータ・サービス社(マイニラッド)は、このほど、国際商業会議所(ICC)国際仲裁裁判所事務局に対し、MWSSとの料金改定に関する対立を解決するための「争議通知」を提出した。この争議通知は、ICC会頭に対し、マイニラッド提訴委員会の議長任命を依頼するものである。
政府が保証するマイニラッドとMWSSとの間の事業合意書においては、両者が交渉などで解決できない問題に関しては、国際通商法に基づく国連委員会仲裁規則による仲裁手続きを行うと規定されている。具体的には、提訴委員会と称される3人委員会を設置、仲裁手続きを実施する。
この3人委員会の議長はICC会頭によって任命され、委員はマイニラッド、MWSS双方から1名ずつ指名されることになっている。したがって、今回のマイニラッドによる「争議通知」提出は、国際方式による仲裁開始を意図する、
マイニラッドは、平均基本料金を1立米あたり8.58ペソ(28.35%)の値上げ申請を行ったが、MWSSはその値上げ申請を却下、逆に5年間で同1.46ペソ(4.82%)、年間同0.29ペソ(0.964%)の値下げを命じたのである。この大きな相違を解決するために、ICC会頭に提訴委員会の議長任命を依頼したのである。
マイニラッドは、1997年のフィリピン政府との民間委託契約(コンセッション契約)に基づき、MWSSから引き継いだマニラ首都圏の西地区全17市区をサービスエリアとして、浄水や下水処理サービスの提供、上下水道管路網の維持管理、検針や料金徴収までを含むフルコンセッション事業を行っている。サービスエリア内の人口は、フィリピンの人口のおよそ一割に相当する約950万人であり、単一コンセッション契約に基づく民間水道事業としては、サービスエリア内の人口規模において世界最大である。
マイニラッドのサービスエリア内において、無収水率(漏水・盗水など売上に結びつかない水量の割合)の削減と現状10%程度に留まる下水道普及率の向上が今後の経営課題となっている。このため、マイニラッドは、今後5年間の設備投資予定額を、これまでの500億ペソから700億ペソへと上方修正、上下水道設備の拡充ピッチを高める方針である。そのためにも、料金値下げは受け入れられない状況である。
なお、丸紅は今年、マイニラッドの株式20%取得(間接取得)に関してのマイニラッド主要株主との交渉を完了、マニラッド社株式20%を取得した。具体的には、丸紅は、関連会社を通じて、MPICとDMCIとの合弁企業DMWCIの株式21.54%を取得。DMWCIはマイニラッド社株式92.85%を保有していた。したがって、丸紅はマイニラッド社へ20%へ間接出資、すなわちマイニラッド社の経営権の20%を支配することになった。マイニラッドの水道料金改定の行方は、丸紅にも影響することになる。
一方、首都圏東地区で上下水道事業を展開するマニラ・ウォーター(MWS、アヤラグループ)も、マイニラッドと同様に、料金値上げ申請を却下され、逆に料金値下げを命じられている。MWSは既に9月24日に、国際仲裁裁判所事務局に対し「争議通知」を提出、提訴委員会議長任命を要請している(13年10月4日のフィリピン証券取引所回覧7499-2013号などより)。