経済産業省、「新興国課税問題の事例と対策」作成

2013/09/10

フィリピン、ベトナム、インド、中国、タイなど中心に
比での租税条約適用や還付手続きの煩雑さなど例示
 

  日本経済産業省は、今後新興国への進出を検討している日本企業に対し、進出先国において発生している課税問題を広く周知すべく、「新興国における課税問題の事例と対策」を作成した。

1.新興国における課税問題について
 日本企業が多く進出している新興国では、自国産業の育成や外貨獲得を目的に、自国外の企業に対して、移転価格課税やPE認定等による実態と乖離した強引な税務執行が行われることがある。この場合、日本における課税との競合が発生し、国際的な二重課税を生じるリスクがある。

 なお、PE(恒久的施設)とは支店や事務所、工場といった事業を行う一定の場所のことを指す。租税条約上、日本企業が進出先国で獲得する事業利得に対する当該進出先国からの課税は、「PE を有する場合」に限定されている。

 2.「新興国における課税問題の事例と対策」について
 今回、新興国への進出を検討している日本企業に対し、進出先国において発生している課税問題を周知することを目的に、「新興国における課税問題の事例と対策」を作成した。

 この資料では、、フィリピン、中国、インド、ブラジル、インドネシア、タイベトナム、マレーシアを中心とした新興国に多く見られる移転価格課税やPE 認定等に関する課税事案の具体例を紹介するとともに、企業として取るべき対応方策及び各種支援窓口を記載している。

 この資料の周知を通して、新興国進出の際の税務リスクへの認識が高まり、以て日本企業の海外展開及び日本への資金還流の円滑化の促進に資することが期待される。この資料は経済産業省ホームページ に掲載されている。
<概要版> http://www.meti.go.jp/publication/downloadfiles/shinkoukoku_gaiyo.pdf
<詳細版> http://www.meti.go.jp/publication/downloadfiles/shinkoukoku_syosai.pdf

 フィリピン事例としては、租税条約適用手続きの煩雑さが以下のように掲載されている。
『外国法人が配当源泉税率の軽減について租税条約の適用を受ける場合には、税務当局に対して申請を行い、承認(ルーリング)を取得する必要がある。この手続きは配当を受領する度に行う必要があると解釈されており、配当受領の都度、配当決議日から配当支払日までの限られた期間に、必要書類の準備、申請、ルーリング取得を完了しなければならず、実務上、非常に厳しいスケジュールとなっている。なお、必要書類には領事証明、公証等が必要になる資料もあるため、準備に一定の期間を要している。』

 また、フィリピンでの還付請求の難しさ等が以下のように掲載されている。
 『還付請求に係る訴訟に対する租税裁判所の判決が下されるまでに、一般的に6年以上、最高裁判所においては10年以上かかることもあるとされている。また、還付金訴訟の場合は、還付申請金額の1%を手数料として租税裁判所へ支払う必要があり、手間及び費用の点からも納税者を本質的に救済する制度にはなりえていない。』(13年9月9日の日本外務省発表より)。