宇宙ステーションの日本実験棟からフィリピン洪水災害観測
2013/08/31
高精細ハイビジョンカメラ活用で鮮明映像、被害軽減貢献へ
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月23日、フィリピンの洪水の状況について、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟から日本が誇る民生品ハイビジョンビデオカメラシステム(COTS HDTV-EF)を用いて観測し、映像を提供した。これは、ISSからの災害に対する支援活動となる。
フィリピンのマニラ首都圏や近郊州では、熱帯性暴風(台風12号;アジア名Trami;現地名マリン)による連日の豪雨により、洪水や土砂崩れが発生したため、8月19日に「センチネル・アジア」に対して、フィリピンのマニラ観測所より緊急観測要請が出されていた。
「センチネル・アジア」とは、アジア・太平洋地域の自然災害の監視を目的とした国際協力プロジェクトである。日本を始めとするアジア地域各国が保有する地球観測衛星など宇宙技術を使って得た災害関連の情報をインターネット上で共有し、台風、洪水、地震、津波、火山噴火、山火事など自然災害がもたらす被害を軽減、防災することを目的としている。
この要請を受けて、8月23日にISSが同地域上空を通過した際、「きぼう」の船外実験プラットフォームに搭載された民生品ハイビジョンビデオカメラシステム(COTS HDTV-EF)により、マニラの被災地の状況を観測し、撮影した。撮影された動画データは、センチネル・アジアの枠組みを通じて、要請元であるマニラ観測所に提供された。
8月23日はあいにくの曇天であったが、HDTV-EFの特徴である動画撮影によって、水の照り返しも見られ、浸水地域の識別に役立つことが期待される。
JAXAはセンチネル・アジアや世界全体に拡げた国際災害チャータといった国際的な協力の枠組みを通じた災害に対する支援を、これからも継続していく方針である(13年8月29日の宇宙航空研究開発機構発表より)。