日比関係一層強固に、27日に両国首脳会談

2013/07/27

100億円の「災害復旧スタンドバイ借款」供与
巡視艇10隻供与等で沿岸警備能力向上支援
ミンダナオ持続的発展や人材開発支援強化
日比間定期便の増加など航空関係を拡大へ
 

  フィリピンを公式訪問した安倍晋三総理大臣は、7月27日10時20分(現地時間)から約65分間、マラカニアン宮殿において、アキノ大統領との間で日・フィリピン首脳会談を行った。概要は以下のとおり。


1.冒頭
 アキノ大統領が安倍総理の訪問を心から歓迎するとともに、日本の参議院選挙の結果、与党が勝利したことに対し祝意が示された。安倍総理は6年半ぶりに公式訪問することができ喜ばしいと述べ、両首脳は、共に繁栄するための「戦略的パートナーシップ」の更なる強化に向けて、緊密に連携していくことで一致した。

2.二国間関係
 二国間関係について、安倍総理が、対フィリピン外交「4つのイニシアティブ」として、(1)活力ある経済を共に育むこと、(2)海洋分野での協力を推進すること、(3)ミンダナオ和平プロセス支援を強化すること、(4)人的交流を一層促進することを表明し、両首脳は、これに基づいて両国関係をより建設的かつ互恵的なものへと発展させていくことで一致した。

(1)第1のイニシアティブである活力ある経済を共に育んでいくため、両首脳は、大都市圏の運輸・交通インフラについて、特に、日本の支援で作成されたマニラ首都圏の「運輸・交通ロードマップ」を踏まえ、協力していくことで一致した。また、安倍総理が、フィリピンによる地デジ日本方式採用に対する期待を表明したほか、災害復旧支援のために新たに創設した「災害復旧スタンドバイ借款」として100億円を供与することを表明した。さらに、金融分野において、両首脳は、二国間通貨スワップの拡充に向けた協議が開始されるなど、協力の進展を歓迎した。

(2)第2のイニシアティブである海洋分野での協力を推進し、自由で開かれた海洋を共に守るため、両首脳は海洋協議の重要性を確認するとともに、防衛当局間、海上保安機関間でも共同訓練を始めとした実践的な協力や各種交流を進めていくことで一致した。また、安倍総理から、フィリピン沿岸警備隊の能力向上のため、フィリピン側からの要請を踏まえ、円借款による巡視艇10隻の供与を行うと表明した。

(3)第3のイニシアティブであるミンダナオ和平プロセスについては、安倍総理が、昨年10月の「枠組み合意」を改めて高く評価するとともに、今後の和平の進展に応じて、(1)コミュニティ開発支援、(2)移行プロセスにおける人材育成支援、(3)持続的発展に向けた経済開発支援を三本柱として支援を強化していく考えを示した。また、この関連では,首脳会談の後に行われた共同記者発表の際に、今後の経済開発に役立てるよう作成したミンダナオの地形を精密に描写した画期的な地図を、安倍総理からアキノ大統領に進呈した。

(4)第4のイニシアティブである人的交流に関しては、安倍総理から、「JENESYS2.0」の下でフィリピンから多くの青少年を招へいすること及び観光促進のため7月1日から査証緩和を実施していることに加え、日・フィリピン間の定期便の増加など航空関係を拡大していきたいと述べ、両首脳は、二国間交流の礎である人的交流を一層推進していくことで一致した。

3 地域協力等
(1)両首脳は、日・ASEAN友好協力40周年を契機に日・ASEAN関係が一層強化できるよう、今年12月に開催される日・ASEAN特別首脳会議に向けて連携していくことで一致するとともに、アジア太平洋地域情勢についても意見交換を行った。

(2)南シナ海をめぐる問題についても取り上げられ、安倍総理が、この問題は地域・国際社会の関心事項であること及び全ての関係国が一方的な行動を慎むことを含め、国連海洋法条約を始めとする関連国際法を遵守し、自国の主張の国際法上の根拠を明確にすべきであることを指摘した。

(3)北朝鮮については、安倍総理が、「北朝鮮による核保有を断じて認めない。安保理決議を誠実かつ完全に実施すべきとのメッセージを送り続ける必要がある。また、拉致問題は日本の主権及び国民の生命・安全に関わる重要な問題であり、現政権のうちに完全解決する決意であり、引き続き協力を願いたい」と述べた。

(4)また、安倍総理が、日本国内における憲法改正、NSCの設置、集団的自衛権に関する議論・検討について説明した。具体的には、憲法改正については、「平和主義」、「国民主権」及び「基本的人権」を当然の前提とした上で、現在の日本にふさわしい憲法の在り方について議論を深めている旨を、また、集団的自衛権については、国際社会全体の安全保障環境の変化を踏まえ、日本の安全を確保し、日米同盟、そして地域の平和と安定に貢献していくとの観点から検討を進めていく旨を説明した(13年7月27日の日本外務省発表より)。