フィリピン外相、中国は海洋法条約違反と非難

2013/05/23

中国の南シナ海での領海主張は行き過ぎとも
領土・海洋問題は司法の場で解決と強調 

  フィリピンのアルバート・デル・ロサリオ外相は5月23日、第19回国際交流会議「アジアの未来2013」(日本経済新聞社・日本経済研究センター共催)で講演した。


 同外相はまず「アジアにおける経済成長の持続を確かなものにするため、国際的な紛争や脅迫をできるだけ減らすよう積極的に行動すべきだ。民主主義や自由、平和、人権の尊重、法の支配といった普遍的な価値観があってこそ、未来を形作る試みが可能になる」とコメントした。

 そして、「南シナ海のほぼ全域が自国の領海だとする中国の主張は行き過ぎだ。国連海洋法条約に違反している。フィリピンは同条約に基づく仲裁を申し立てたが、中国は拒否している。仲裁は中国とフィリピンだけでなく、国際社会の利益にもなる。ASEAN議長国のブルネイなどが、南シナ海の『行動規範』策定に関して話し合う会議の早期招集に同意するよう中国に働き掛けることを期待する」と強調した。

 そして、「領土や海洋を巡る争いは、北東アジアにも存在する。日中韓の協力と友情は地域の将来にとって不可欠だ。これら国々の問題は、地域の安定や成長に幅広い影響を与えるからだ」と、日中韓問題にも言及した。

 フィリピン動向に関しては、「厳しい外部環境にもかかわらず、2012年のフィリピン経済は予測を上回る経済成長を達成した。株価は連日最高値を更新し、米格付け機関は初めてフィリピン国債を投資適格水準に引き上げた。それでも、公正で包括的な成長を実現するには、なおすべきことが多くある。フィリピン政府は雇用の創出や輸出の拡大、農業の近代化やインフラの改善などに力を入れている」と説明した。

 地域経済協力に関しては、「ASEANと日中韓など6カ国が15年までの交渉妥結を目指す『東アジア地域包括的経済連携(RCEP)』は、貿易や経済で共通の利益を得る原動力になる。15年末までの実現を目指すASEAN経済共同体は、貿易やインフラ開発、ヒトやモノの往来を促進するだろう。
 ASEAN経済共同体の発足は、新たな統合の始まりにすぎない。すでにASEANでは(さらに統合を進めるための)次の目標に関する議論を始めている」と述べた(日本経済新聞アジアの未来2013特集などより)。