比トヨタ設立25周年、高シェア・好業績続く

2013/05/23

2012年37%増益、今第1四半期は49%増益
12年連続の三冠王へ、産業発展にも貢献

 

 トヨタ自動車(トヨタ)のアニュアル・レポートによると、トヨタの2011年における新興国の販売比率は45%に達し、2001年の18.8%から10年間で2.4倍に、2008年の35.6%からも3年間で10%上昇している。


 グローバルビジョンで掲げた、2015年までに50%を達成するという目標の早期実現に向けて、新興国で築き上げたグローバル供給体制をさらに強化するとともに、アジアを重要拠点としたより一層の現地化と、新興国専用コンパクトカーの積極的な投入による販売拡大に取り組む方針である。

 トヨタ販売台数と新興国販売比率(単位:千台)

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

世界販売

5,262

5,519

6,070

6,708

7,268

7,922

8,429

7,996

6,980

7,528

7,097

新興国販売

987

1,142

1,417

1,695

2,027

2,246

2,658

2,849

2,646

3,145

3,193

新興国販売比率

18.8%

20.7%

23.3%

25.3%

27.9%

28.4%

31.5%

35.6%

37.9%

41.8%

45.0%

(出所:トヨタ自動車2012年版アニュアル・レポートより)

 トヨタの新興国における取り組みの歴史は古く、特に、ASEAN諸国には1960年代から輸出と現地生産を推進してきた。1970年~1990年までの「創世期」の段階においては、1976年にフィリピンにビジネス多目的車(BUV)の「タマラオ」を導入し、翌年にはインドネシアに「キジャン」を導入した。
 
 フィリピンやインドネシアは、大家族主義でクルマは事業用と家庭用の兼用で使用できることが必要であり、未舗装の道路も多いことから多目的バンタイプのクルマが好まれた。また低廉なクルマづくりを行うためにプレス設備は導入せず、鉄板を折り曲げ、溶接してボディを製作する手法を採用するなど、現地スタッフやサプライヤーとともに新商品を開発してきた。このように「創世期」においては、自動車産業のインフラ整備とサプライヤーの発掘、育成に取り組んだ。
 
 トヨタの海外ビジネスは、このような「創世期」などを経て、「世界規模での効率的な生産・供給」へと進展している。グローバルな生産・供給を担う新興国においては、その生産能力増強をめざし、投資を拡大している。
 インドでは2009年に「フォーチュナー」、2010年には「カローラディーゼル」と「エティオス」の生産を開始し、それに伴い工場に対する投資を拡大している。ブラジルでは2007年に「カローラFFV」の生産を開始、以降、順調に販売を拡大し、2012年後半には、コンパクトカーの新工場を立ち上げる予定である。
 
 これらの結果、新興国における生産能力は、2013年には国内生産台数と同レベルの約310万台を見込むなど、2000年の生産実績54万台、2005年の同135万台、2010年の同238万台から急ピッチで拡大している。
 
 このような状況のなか、トヨタのフィリピン拠点であるトヨタモーター・フィリピンズ(TMPC)の強さが際立っている。TMPCは、TMPCは、1988年8月にトヨタ自動車のフィリピン車両製造/販売拠点として設立された。今年は設立25周年ということになる。1989年から生産/販売を開始、現在の出資比率はトヨタ自動車34%、 三井物産15%、メトロバンク・グループ(GTキャピタル・ホールディングス=GTCAP))51%となっている。

 このほど、TMPC株式51%を保有するメトロバンク・グループの持株会社GTCAPが、2013年度第1四半期(1月~3月)の決算速報を発表した。その純利益は前年同期比211%増(約3.1倍)の40億ペソ、一時的損益を除外したコア純利益も同112%増(約2.1倍)の27億ペソに達するなど非常に好調であった。この大幅増益決算にはTMPCも貢献している。
  
 TMPCの2013年第1四半期の純利益は同49%増の11億ペソへと大幅増加した。2012年の年間純利益は前年比37%増の30億ペソと二桁増加したが、2013年年間でも業績続伸が期待できる状況である。

 TMPCの第1四半期の販売台数は1万6,970台に達した。そして、フィリピン自動車工業会(CAMPI)加盟企業におけるシェアは断トツの40.6%で、第2位の三菱モーター・フィリピンズの24%を大きく引き離している。
 TMPCは、2012年のCAMPIの車種別シェアにおいて、乗用車で44%、商用車で40.7%と双方首位となった。すなわち、フィリピン自動車市場の三冠王(総販売台数、商用車販売台数、乗用車販売台数いずれもトップ)である。このTMPCの三冠王は11年連続の偉業であるが、2013年も12年連続での達成が期待される。

セグメント別でも、2012年オートフォーカス・ピープルズ・チョイス賞における『オートモービル・オブ・ザ・イヤ―』を受賞したサブコンパクトカー「ヴィオス」のほか、中型乗用車の「カムリ」、コンパクト乗用車の「カローラ・アルティス」、ピックアップの「ハイラックス」、ユ―ティリティー・バンの「ハイエース」がそれぞれのセグメントでのベストセラ―カ―となった。
 
 なお、GTCAPは、メトロバンクが保有していたTMPC株式約464万株(30%)を、昨年から今年初めにかけて取得した。取得総額は90億ペソであった。これにより、GTCAPのTMPC直接保有比率は51%に高まった。一方、メトロバンクの直接保有比率はゼロとなったが、メトロバンク・グループの保有比率は51%のままで変化はない。
 この売買により、GTCAPは主力事業の一つである自動車事業の基盤を強化する一方、メトロバンクは、バーゼルⅢ自己資本基準導入に向けて、自己資本や財務基盤を一段と強化する。
 TMPC株式30%の売買額90億ペソは、独立機関の算出や第3者のオピニオンなどによって慎重に決定されたものである。したがって、TMPC株式100%の価値、すなわち企業価値は300億ペソ(約750億円)と試算されたことになる。

 なお、TMPCは世界クラスのトヨタ・テクニカル・スクール(整備士等養成学校)を設立しつつある。このスクールは、ラグナ州サンタロサのトヨタ特別経済区の敷地1ヘクタールに校舎を建設、1学年300人の2年生学校を開校する。開校日は2013年9月と予定されている。将来的には10へクタールに拡大する計画である。
 トヨタは、現地生産に伴う雇用創出によりフィリピン経済へ貢献していくと同時に、優秀な技能者の育成を通じて、フィリピン自動車産業の発展にも貢献していく考えである(トヨタ自動車の年次報告書などより)。