フィリピン、引き続き知的所有権監視対象国に
2013/05/04
来年に監視国リストからの除外の可能性も
米国通商代表部、特別301条報告書を発表
米国通商代表部(USTR)は5月1日に、特別301条報告書2013年版を発表した。
この報告書は、301条項に基づき各国の知的所有権の運用状況等を調査、米国の知的所有権の保護が十分でない国を特定し改善を促すものとなっている。
USTRは2013年版において、95の貿易相手国・地域を分析している。そして、ウクライナを最優先監視対象国としていた。そのほか、優先監視国として10カ国、普通監視国として30カ国・地域をリストアップした。すなわち、41カ国・地域が監視対象国とされたのである。
USTRは、その悪質な行為、ポリシー、または慣行などにより、米国製品に最も悪影響を与えている、もしくは与える可能性を有する貿易相手国であるとして、ウクライナを最優先監視対象国と指定した。そして、ウクライナは、知的所有権保護のための二国間または多国間の交渉で大きな進展を見せていないとも指摘した。
優先監視国としてリストアップされた10カ国とは、アルジェリア、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、パキスタン、ロシア、タイ、ベネズエラである。これら10カ国は昨年も優先監視国とされていた。
一方、普通監視国としてリストアップされた30カ国・地域とは、フィリピン、バルバドス、ベラルーシ、ボリビア、ブラジル、ブルガリア、カナダ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、フィンランド、ギリシャ、グアテマラ、イスラエル、イタリア、ジャマイカ、クウェート、レバノン、メキシコ、パラグアイ、ペルー、ルーマニア、タジキスタン、トリニダード・トバゴ、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナムである。
このようにフィリピンは、2013年もベトナムなどとともに、普通監視国リストにとどまることになった。フィリピンは2005年までは優先監視対象国に指定されていたが、2006年からは8年連続で普通監視対象国となっている。
USTRは、フィリピンに関して「知的所有権保護のための規制や法整備は急ピッチで進展してきている」と評価している。改善例として、2012年に長年の懸案であった世界知的所有権機関(WIPO)インターネット条約完全履行のための法整備が行われこと、2010年の映画館でのビデオ撮影禁止法案成立により映画館経由での海賊版映像作成が大幅減少していること、知的所有権訴訟手続き迅速化などが図られていることなどが挙げられている。
しかし、「フィリピンは依然として、オンライン取引など多くの手段により海賊版映像や偽造品の入手が可能な状況である。知的所有権保護のための規制や法律の実際の運営上での非効率さ改善が求められる状況でもある」として、フィリピンを普通監視国リストにとどめることを決定した。
ただし、「フィリピンが知的所有権保護の努力を一段と強化し、規制や法律の実効性を高めることが出来るのならば、来年は監視国リストから除外される可能性もある」と説明した(13年5月1日の米国通商代表部発表などより)。