セブ都市計画を横浜市とJICAが包括的支援
2013/05/01
「メガ・セブ・ビジョン 2050」策定や具現化協力
日本の自治体ノウハウ活用の新ODAモデル
国際協力機構(JICA)は横浜市と連携し、フィリピンのメトロ・セブ(セブ市を含む13の自治体で構成)の都市開発ビジョン「メガ・セブ・ビジョン 2050」の策定を支援した。
このビジョンが取りまとめられたことを受けて4月16日、荒川博人JICA理事と林文子横浜市長がマニュエル・ロペス駐日大使とフィリピン大使館(東京都港区)で会談し、引き続き、メトロ・セブ開発ビジョンの具現化に向けて協力することを確認した。
JICAが自治体と連携して海外の都市計画全体を支援するのは初めてである。日本政府が推進する自治体の海外進出をJICAが支援する新たなODAのモデルとなる。
<JICA、横浜市、フィリピン、三者のパートナーシップ>
フィリピン中部に位置し人口約255万を擁するメトロ・セブは、マニラ首都圏に次ぐフィリピン第2の都市圏である。急速な人口増加と都市化が進む一方で、脆弱な都市基盤が地域の発展を阻害する要因となっている。そこで、開発面で長年にわたってフィリピンと協力関係を築いてきたJICAが、みなとみらい地区などの開発で経験豊富な横浜市と連携し、メトロ・セブの都市開発ビジョンを検討する調査を2012年12月から2013年3月にかけて実施した。
三者が結び付いた背景には、JICAと横浜市が2011年10月、開発途上国の都市課題の解決に向けた協力などを目的として包括連携協定を締結したこと、一方、横浜市もセブ市と2012年3月、「持続可能な都市発展に向けた技術協力に関する覚書」を交わしたことがある。
「メガ・セブ・ビジョン 2050」は、住みやすさ、交通など6分野の開発ビジョンと、それらを実現するための四つの開発戦略で構成されている。さらに、具体的な開発事業を促進するために、安全な水の24時間供給実現といった参考目標も掲げられた。JICAはこのビジョンに基づき、今後、交通インフラや上下水道事業、廃棄物処理、再生可能エネルギーの活用など、個別事業の実施に当たって、ODA、官民連携などの形で、横浜市内企業はもとより、日本企業の事業展開などを支援していく。
メトロ・セブの都市開発に関連する民間企業の取り組みとして、JICAが窓口を務める外務省委託調査を受注した横浜市内の企業3社が、すでに汚泥処理、固形廃棄物処理、太陽光発電の分野で調査を実施している。また、2012年には横浜市水道局が設立した横浜ウォーター株式会社が、JICAの技術協力プロジェクトとしてメトロ・セブ水道区の浄水処理や配水管理などの能力強化支援を実施している。
JICAは今回の調査では、一からデータを積み上げる従来のマスタープランの調査手法ではなく、目指す都市のビジョンを議論した上で、これまで個々に検討されていた事業を取りまとめ、整合性を持たせて提案するアプローチをとったことで、調査開始から6ヵ月という短期間で一定の結論を得た。
<途上国の開発課題解決に日本の自治体のノウハウを活用>
日本の地方自治体は上下水道、廃棄物処理、都市開発などに関するノウハウと知見を持つ。中でも横浜市は、上下水道、廃棄物処理、都市開発、地球温暖化対策などに代表される都市づくりに関するノウハウを生かして、「横浜の資源・技術を活用した公民連携による国際技術協力(Y-PORT事業)」を推進している。
JICAは現在、横浜市が持つ包括的都市づくりのノウハウをベトナムやインドネシアで活用する可能性を検討するための調査を実施しており、今後はフィリピンに限らず東南アジアの他国へ展開の可能性も見込まれる。
横浜市以外にも、JICAは2013年2月、北九州市と包括連携協定を締結。北九州市は長年にわたって水道や環境分野でJICAと協力してきた実績がある。JICAは自治体の持つノウハウを開発途上国の開発課題解決に生かすため、今後も自治体との連携を進めていく方針である(13年4月30日の国際協力機構ニュースリリースより)。