依然強盗・窃盗・殺人事件多発、振り込め詐欺増加
2013/04/22
対日系企業(社員)脅迫事件も:海外安全対策情報
政治的に安定も中間選挙線での殺人事件複数発生
日本の「海外安全対策情報」については、これまで外務省所管の特例社団法人「海外邦人安全協会(JOSA)」を通じ、同協会の会員企業向けに情報発信が行われてきた。
しかし、2013年1月以降の情報については四半期ごとに在フィリピン日本大使館ホームページへも掲載されることとなった。2013年1月~3月分のフィリピンに関する海外安全対策情報については、以下の通りである。
1.社会・治安情勢
(1)一般治安情勢
2013年1月~3月においても強盗・窃盗事件や銃器を使った殺人事件が多発しており、フィリピンの治安情勢は引き続き注意を要する。 また,銃規制の緩さから些細なことから銃器による生死にかかわる事態に発展する危険性があることも認識する必要がある。
なお、2012年夏以降,振り込め詐欺と思われる標的型メールが世界各国に出回っており、その内容は「フィリピンを旅行中に強盗被害に遭い所持金が全くないため、至急送金してほしい」というものである。このメールは実在の本人になりすまし、本人のウェブメールアドレスから英文で送信されているが、犯行グループは必ずしもフィリピン国内に存在するとは限らず、国際犯罪グループによるものと思われる。
(2)政治的安定度
2010年6月に就任したアキノ大統領は、3年目に入っても70%を超える国民の高い支持率を背景に、汚職。腐敗の撲滅、治安強化及びミンダナオ和平推進を重要政策として掲げ、安定的に政権を運営してきている。
一方、今年5月13日(月)にフィリピン全土で中間選挙(上院,下院及び地方選挙の投票)が行われる予定である。2012年度第4四半期においてすでに立候補者を標的とした殺人事件が複数発生するなど、中間選挙に伴う治安情勢は予断を許さない状況である。
(3)反政府勢力の動き
反政府武装勢力の動きについては、2012年10月、比政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)との間で枠組み合意が署名され、今後和平の最終合意に向けた進展が期待されている。しかしながら、MILFから分裂した和平合意に反対する勢力、アブ・サヤフ・グループ(ASG)やジュマ・イスラミヤ(JI)などイスラム武装勢力は、2012度第4四半期においても引き続き国軍等治安部隊との間で交戦しており、ミンダナオ地方の治安情勢については依然として不安定要因が大きい。また、共産主義武装勢力である新人民軍(NPA)は、ミンダナオ地方において,「革命税」の要求に応じない企業襲撃、資金獲得の為の誘拐等を展開している他、ルソン地方,ビサヤ地方においても,国軍との間で頻繁に交戦しており注意が必要である。
(4)対日感情
概ね良好である。
2.一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)フィリピン国家警察が発表した犯罪発生件数によれば、2012年の犯罪種別の内訳は以下のとおり。
殺人 11,506件
殺人未遂 34,825件
強姦 4,738件
強盗 26,988件
スリ・ひったくり 43,606件
車両強盗 6,919件
家畜強盗 579件
(2)邦人被害事案
(ア)1月上旬,マニラ首都圏カロオカン市のホテルのロビーで,邦人男性旅行客が一流銀行の副頭取と称するフィリピン人に投資話を持ちかけられ,頭金50万円を預けたところ,持ち逃げされた。
(イ)1月下旬,マニラ首都圏マカティ市の路上で,邦人男性観光客が現職警官に職務質問を受け,車両にて連れ回された末,現金等の入ったバッグを奪われた。
(ウ)2月上旬,マニラ首都圏マカティ市リトル東京内のレストランで邦人男性が現金,旅券などの入った鞄を置き引きされる。
(エ)2月中旬,マニラ首都圏マニラ市で,邦人男性旅行客が公共交通鉄道車内で旅券,現金等の入ったポーチをすられる。
(オ)2月下旬,マニラ首都圏マニラ市のホテルに宿泊していた邦人男性観光客が外出中に客室内のセーフティボックスごと盗難に遭った。
(カ)2月下旬,マニラ首都圏マニラ市で,邦人男性観光客がバイクに乗った2人組に現金,腕時計等の入った鞄をひったくられる。
(キ)3月中旬,マニラ首都圏ケソン市のホテルで,邦人学生ボランティアが就寝中に強盗が押し入り,現金等を盗まれる。
(3)邦人以外の被害事案
(ア)1月上旬,首都圏カロオカン市の食堂で,経営者の男性が現金や貴金属を奪われた末に,全身を刃物で刺され死亡。
(イ)1月上旬,ルソン地方カビテ州で,隣人のフィリピン人男性が銃を乱射し,子供2名を含むフィリピン人男女8名が死亡。
(ウ)1月下旬,マニラ首都圏マニラ市で,女性実業家の車に拳銃を持った男性3人組が乗り込み,連れ回された末に,現金,車等を奪われる。
(エ)2月中旬,首都圏ケソン市で高利貸し業を営んでいたインド人が強盗被害にあった末,射殺される。
(オ)2月下旬,ルソン地方北イロコス州において,町長選に立候補していた現職のバランガイ(最少行政区)議長が,バイクに乗った男性に射殺される。
(カ)3月上旬,首都圏パサイ市の路上で,フランス人男性が男性2人組に現金の入った鞄を奪われそうになり,抵抗したために射殺される。
3.誘拐・脅迫事件発生状況
(1)1月上旬,ルソン地方ラグナ州で台湾人の少女が武装5人組に誘拐され,身代金を要求されたが,2日後に無事解放される。
(2)1月上旬ミンダナオ地方サンボアンガ市で飲食店経営のフィリピン人男性が武装した5人組に拉致される。
(3)3月中旬,ミンダナオ地方コンポステラバレー州で男性警官1名が国軍兵士を装った武装集団に拉致される。
4.日本企業の安全に関する諸問題
当地において、一般的に企業及び個人に対する恐喝、脅迫、誘拐等が少なくなく、日系企業(社員)に対する脅迫事件なども発生していることもあり、進出日系企業関係者にとっては、企業自体及び社員の安全に対しては常時注意を要する。また,共産勢力(NPA)は、環境破壊,住民搾取等の名目で「革命税」を民間企業に要求し、企業側が応じない場合には、企業への脅迫、恐喝等の行為や襲撃に及んだりしている。
1月中旬には,ミンダナオ地方においてドール社のバナナ農園をNPAが襲撃する事件が発生、また、2月中旬には,同じくミンダナオ地方においてデルモンテ社のパイナップル農園がNPAとみられる武装集団に襲撃され、男性警備員1名が死亡している(13年4月22日の在フィリピン日本大使館発表より)。