日本、開発途上国向けの新薬開発支援を強化
2013/04/08
官民連携、グローバルヘルス技術振興基金設立
4月8日、一般社団法人 グローバルヘルス技術振興基金(GHIT基金)の設立が発表された。
GHIT基金は、日本政府、日本の製薬企業5社、ビル&メリンダ・ゲイツ財団による日本初の官民パートナーシップである。GHIT基金は、エイズ、結核やマラリア、顧みられない熱帯病(NTD)といった疾患に対し、日本の製薬企業や学術・研究機関が有する高い科学技術における知見を活用した新薬開発によって、グローバルヘルスに対する日本の国際貢献を強化することを目指している。そして、日本と海外の研究機関の連携促進や、基金の目的に沿った有望な研究に対して助成金を給付することにより、基礎研究と臨床開発を繋ぐ橋渡しの役割を果たし、新薬開発を推進していく。
日本外務省は,GHIT基金の設立に当たり、開発途上国向けの医薬品研究開発と供給支援を官民連携で促進するために、厚生労働省とともに2012年度補正予算において、それぞれ7億円を同基金と連携する国連開発計画(UNDP)に拠出している。
開発途上国を中心に蔓延する、顧みられない熱帯病(NTD)や結核、マラリア等の疾病の治療薬の研究開発は、先進国において需要が少ない等の理由から充分になされていない。国際社会では、製薬会社と協力して、開発途上国において人々が安価で必要不可欠な医薬品を入手できるようにすることが求められている。
ちなみに、顧みられない熱帯病(NTD)とは、熱帯地域を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症である。先進国では主要な疾患と考えられてこなかったことから、顧みられない熱帯病と呼ばれている。世界保健機関(WHO)では,住血吸虫症、シャーガス病、リーシュマニア症など17疾患群をNTDと定義している。
今後、グローバルヘルス技術振興基金とUNDPが連携し、国際保健分野での貢献を行うとともに、日本の製薬産業の同分野への更なる参画が期待される。ミレニアム開発目標(MDGs)でも、「開発のためのグローバルなパートナーシップの推進」のターゲットとして、製薬会社と協力して、開発途上国において人々が安価で必要不可欠な医薬品を入手できるようにすることが掲げられている。
なお、フィリピンにおいては、熱帯地方特有の感染症に関するフィリピン保健省直轄の中央研究所として、熱帯医学研究所(RITM)が、日本のODA により、1981年にマニラ首都圏モンテンルパ市アラバンに設置されている。RITM は、新興感染症などのためにも重要な役割を果たしており、 2003年の SARS発生の際や 2009年の新型インフルエンザ H1N1 の際も診断・治療の拠点として機能した。
2002年には、 日本のODA により、RITM に付属して国立結核研究所が設置され、フィリピンの結核対策の中央検査室として機能している。
また、JICAが、フィリピンで「小児呼吸器感染症の病因解析・疫学に基づく予防・制御に関する研究プロジェクト」などを実施中である。このように、日本は感染症研究分野の先進的な知見を活用し、アジアやアフリカで熱帯感染症などについての研究協力を推進している。今回のグローバルヘルス技術振興基金の設立は、その動きを加速化させると期待される(13年4月8日の日本外務省発表などより)。