住友金属鉱山、パラワンでレアアース生産
2013/03/11
スカンジウムの効率的回収技術を確立
レアメタルや希土類の重要供給拠点に
住友金属鉱山(住友鉱、本社:東京都港区)は、フィリピンで希土類元素(レアアース)の一つであるスカンジウムの生産を開始する。
スカンジウム(元素記号:Sc)は希土類元素の一つで、1879年に発見された。銀白色の金属で比重は2.99。アルミニウムの強度、耐熱性、耐食性を高めるための添加物、固体酸化物形燃料電池の電解質のほか、メタルハライドランプ、アルカリ電池の電極等に使用される。
住友鉱は、スカンジウム回収のためのパイロットプラントをフィリピンの子会社であるコーラルベイ・ニッケル社(CBNC、所在地:パラワン島、社長:藤村隆則氏)に建設することを決定した。CBNCでは、高圧硫酸浸出法(HPAL法)によりニッケル・コバルト混合硫化物が生産されているが、その原料鉱石中に微量のスカンジウムが含まれている。
住友鉱は、新居浜研究所(愛媛県新居浜市)でその回収方法の開発に取り組んできたが、このほどニッケル・コバルト混合硫化物の製造工程からスカンジウムを効率的に回収する技術を確立した。
そして、2013 年中にCBNC において酸化スカンジウム製造のパイロットプラントを建設、2014 年には月10kg レベルの試作を開始する。パイロットプラントでの操業試験の結果を踏まえ、2015 年を目途に商業規模の酸化スカンジウム生産ラインを建設し、事業化をめざす。
スカンジウムは、現在はアメリカ、ウクライナ、ロシア、中国等を中心に年間10 トン程度生産されていると推定さる。生産量が少なく、かつ高価であることからこれまでは需要が限定されているが、安定的な供給により主な用途であるアルミニウムへの添加剤や固体酸化物形燃料電池の電解質等の分野での伸びが期待される。住友鉱は、今後も有用な金属の効率的な回収に努めて行く方針である。
なお、住友鉱のフィリピンにおける主要事業であるニッケルも、ステンレス鋼及び各種電子材料(半導体用合金・電池等)などの原材料として、コバルトはリチウムイオン電池の正極材や航空機等に用いられる特殊鋼の原材料として幅広い産業で使用されるレアメタルである。日本は原料となる鉱石等の全量を輸入に依存している状況である。
世界的な需要拡大を受けて、レアメタルやレアアース(希土類)確保の必要性が高まる中、住友鉱のフィリピン事業は重要な役割を担っていると言えよう(13年3月11日の住友金属鉱山株式会社ニュースリリースより)。
« 昨年の純外人直接投資(FDI)、10%増の20億ドル | 為替相場:3月11日の終値1ドル=40.690ペソへと反落 »