フィリピンのテロ勢力、一部減退も依然要注意

2013/03/10

アブ・サヤフ、NPA、JI等多くの組織が活動
爆弾テロ、誘拐、「革命税」名目の恐喝など

 3月8日に日本外務省は、フィリピンに対する渡航情報(危険情報)を発出した。そのなかで、テロ情勢に関しては、以下のように記載されている。

 フィリピンには、イスラム系反政府勢力(モロ・イスラム解放戦線{MILF}、モロ民族解放戦線ミスワリ派{MNLF-MG}、イスラム過激派勢力アブ・サヤフ・グループ{ASG}、ラジャ・ソレイマン・イスラム運動{RSMI}等)や共産系反政府勢力(新人民軍{NPA})等多くの組織が存在し、これまで、無差別爆弾事件、身代金目的の誘拐事件等のテロ活動に加え「宗教税」、「革命税」を徴収するとの名目での恐喝等の行為も行っている。
 
 この中で、ASGは、これまでのフィリピン国軍による一連の掃討作戦の結果勢力は減退したとされる一方で、バシラン州やスールー州で国軍と交戦しており、地元住民の拉致、外国人の誘拐、地元企業襲撃等の事件を起こしている。2013年に入り、スールー州ホロ島でASGとMNLF-MGの衝突が発生している。

 また、NPAとフィリピン政府は、2012年12月に行われた特別会合で過去最長となる27日間の停戦に合意するとともに、2013年早期に再度会合を開き、国家の一体性と平和、民主主義と人権、農地改革と農村改革、停戦協定等について協議を継続することで合意しているが、NPA被拘禁者の釈放問題の道筋が見えない中、NPAは和平交渉を有利に運ぶためにミンダナオ地域、ルソン地域及びビサヤ地域の広い範囲で国軍と交戦し、「革命税」の支払を拒否する企業への襲撃を継続しており、注意が必要である。2011年10月には、北スリガオ州において日系鉱山施設等への大規模な襲撃事件が発生している。
 
 さらに、インドネシアを中心に活動している東南アジアの地域テロ組織ジュマ・イスラミーヤ(JI)は、フィリピン南部のミンダナオ地域にも拠点を有しており、ASG等のフィリピン固有のイスラム系反政府勢力と連携しながら軍事訓練やテロ活動を行っているとされている。
 
 このような状況下で、ミンダナオ地域などにおいて、爆発事件が相次いで発生している。爆発事件は、2012年に限っても、特にイスラム教徒ミンダナオ自治地域(ARMM)(とりわけ、マギンダナオ州、バシラン州、スールー州)や南サンボアンガ州、コタバト州(旧北コタバト州)、スルタン・クダラット州において、即製爆弾の使用、手りゅう弾投てきによって死傷者を伴う事件等が多発している。

 誘拐は、特にミンダナオ地方で多く発生している。2012年に限っても、オランダ人男性1名、スイス人男性1名、中国人男性2名、ヨルダン人男性1名と、外国人も被害に遭っている。また、2009年1月には、、スールー州で国際赤十字職員が誘拐される事件や武装集団・勢力による拉致等も発生している。

 マニラ首都圏では、2011年1月にマカティ市の幹線道路であるエドサ通りを走行中の路線バス1台が爆発する事件(5名死亡、13名負傷)、2012年1月には、マカティ市サルセド・ビレッジ内空き地で爆発物が爆発する事件(死傷者なし)が発生、同年9月には、マニラ市内安宿で爆弾を製造する部品が発見される等、爆弾に関連する事件もみられる。
 また、NPAは、社会不安をあおるためのテロ行為(政府関係施設や発電所等の公共施設への攻撃)や「革命税」を徴収するとの名目で恐喝行為を、ルソン地域やマニラ首都圏近郊でも行っている(13年3月8日の日本外務省発表などより)。