フィリピンに対する渡航情報(危険情報)発出

2013/03/09

日本外務省、依然ミンダナオ一部に渡航延期勧告

身代金目的の誘拐やテロの脅威等に注意喚起

3月8日に日本外務省は、フィリピンに対する渡航情報(危険情報)を発出した。その中の地域情勢は以下の通り。


(1)「渡航の延期をお勧めします」(継続):ミンダナオ地域(南サンボアンガ州、北サンボアンガ州、サンボアンガ・シブガイ州、西ミサミス州、南ラナオ州、北ラナオ州、コタバト(旧北コタバト)州、マギンダナオ州、スルタン・クダラット州、サランガニ州、バシラン州、スールー州及びタウイタウイ州)(周辺海域を含む)

(2)「渡航の是非を検討してください」(継続):ミンダナオ地域の中で上記(1)の「渡航の延期をお勧めします。」発出地域以外の地域(カミギン州、カガヤン・デ・オロ市及びダバオ市を除く)及びパラワン州(最北部を除く)(周辺海域を含む)

(3)「十分注意してください」(継続):上記地域以外のマニラ首都圏を含む全地域。

概況としては、以下のように記されている。
1.政治情勢
 2010年6月に就任したアキノ大統領は、3年目に入っても70%を超える高い支持率を背景に、汚職、腐敗の撲滅、治安強化及びミンダナオ和平推進を重要政策として掲げ、安定的に政権を運営してきている。
 2013年5月13日には3年に一度の中間選挙が実施され、フィリピン全土で上院(定員24議席の半数)、下院(全291議席)、地方選挙(州知事,副知事、州議会議員、市町長、副市長・副町長、市町議会議員)の投票が行われる予定である。フィリピン内務自治大臣は、私的武装集団、違法銃器、反政府勢力、犯罪集団、政争の激しさ等の要素を考慮し、中間選挙関連で暴力事件が発生する可能性が高く警戒を強化すべきと判断されるとして、バタンガス州、カビテ州など合計15州を重点警戒州として発表した。
 一方、アキノ政権が重要課題として取り組んできたミンダナオ和平については、2012年10月、フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)が「枠組み合意」に達し、今後、最終合意の早期実現に向けた取り組みの進展が期待されている。


2.ミンダナオ情勢
       2001年にマレーシアを仲介役として開始されたフィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)の間の和平交渉は、2011年2月に再開され、同年8月には日本が仲介してアキノ大統領とムラドMILF中央委員会議長との間のトップ会談が日本で実現した。その後も、マレーシアで和平交渉が行われた結果、2012年10月、「枠組み合意」が署名された。この合意は、2016年の自治政府樹立に向けたロードマップと共に自治政府の大枠を定めたもので、最終合意の実現に向けた重要な一歩として評価される。今後、最終合意の実現に向け、当事者双方が「枠組み合意」の内容を着実に実施し、粘り強い交渉努力を継続してゆくことが重要である。
 これまで、バシラン州、マギンダナオ州、(北)コタバト州などでは、国軍とMILFとの間での交戦に加え、サンボアンガ・シブカイ州では、MILFによる政府部隊の襲撃や、MILFとその分派の間の交戦などが発生していたが、今回の「枠組み合意」を受けて、治安情勢が改善されるかどうかが注目される。なお、2009年11月、マギンダナオ州で地元政治家の家族、支持者及び報道関係者数十人が武装集団に虐殺された事件を踏まえ、同州並びに近隣のスルタン・クダラット州、及びコタバト市には非常事態宣言が現在も発出されている。

3.一般治安情勢
 フィリピンにおいては、銃や手りゅう弾等が使用される犯罪が多く発生しており、実際、銃器は容易に入手可能である。こうした事件は、日常使用する商業施設、外国人の使用も多い繁華街等においても発生しており、マニラ首都圏では日本人を含む外国人も被害に遭っていますので注意が必要である。
 また、身代金目的の誘拐の脅威がフィリピン全土、特にミンダナオ地域において高くなっているので注意が必要である(ミンダナオ情勢・テロ情勢に関しては別掲する)。

 フィリピン観光省作成統計資料によれば、2012年にフィリピンを訪れた日本人は41万人余となっているが、フィリピンにおける犯罪は、日本に比べ、殺人、強盗、婦女暴行等の凶悪事件の割合が高く、一般的に日本人は裕福と見られているため、強盗・窃盗等の標的になる可能性は、他の諸外国人と比べても高いと見られる。
 日本人が被害者となった事件も,殺人事件だけで、2008年7件、2009年3件、2010年5件、2011年1件、2012年5件(いずれも未遂を除く)発生している。また、強盗等凶悪犯罪(マニラ首都圏でのタクシー強盗,睡眠薬強盗を含む)、オートバイによるひったくり、路上での強盗や置き引き、公共交通機関内でのスリ・窃盗,買春行為絡みの恐喝被害なども大使館にそれぞれ複数報告されている。加えて、警官の制服を着た2~3人組に何かしら言いがかりをつけられ、車両内に一時的に軟禁状態中に恐喝被害に遭う事件も複数報告されている。

4.渡航者全般向けの注意事項
①自然災害に注意
 フィリピンでは,地震,火山活動,台風等の自然災害の発生も少なくない。これらの自然災害に際しては,外部と連絡が取りづらくなったり、物資の供給が十分に及ばなくなることも十分予想されるので、日頃から緊急事態に備えた携行品の備蓄などを心がける必要がある。
②テロ・誘拐への備え
(ア)テロへの備え
日頃から治安情勢に関心を持って報道等に注意し,テロの標的となり得るような軍関係施設等には近づかないように努め、外国人を含む不特定多数の人が集まる場所や主要外国関連施設を訪れたり。公共交通機関などを利用したりする際には。身の回りに注意する。
③誘拐への備え
以下の点に注意するよう心がける。
・目立たないようにする。
・行動を予知されないように,パターン化しない。
・無関係な人に行動予定を安易に知らせない。
・不審な兆候(少しでも周囲に普段と異なる点)がないか常に注意を払う。
・一人で外出する等の単独行動はできるだけ慎む。
・子供を一人で遊ばせたり,外出させたりしない。

④海外旅行傷害保険への加入

⑤滞在期間の遵守と計画的な滞在
 フィリピンを一時的に訪問(観光目的や商談等商用目的等)する日本人は、21日以内(日数は到着日から起算)の滞在であれば、事前の査証(ビザ)取得は必要ない。ただし、入国審査において、パスポートの有効期間が6か月以上残っていること及び復路の航空券(またはフィリピンから他国へ渡航するための航空券)を提示する必要がある。パスポートの有効残存期間が6か月未満であったり、入国審査時に復路の航空券(またはフィリピンから他国へ渡航するための航空券)を提示できない場合には、退去命令が発出され、強制的に退去させられる可能性もある。
 
⑥外貨持ち込み・持ち出しへの注意
 フィリピンへの外貨持込み・持ち出しには制限があり、外貨については1万米ドル以上の申告が義務づけられ、現地通貨(ペソ)についても1万ペソ以上の持出し・持ち込みは禁止されている。、出国時に多額のペソ現金を持ち出そうとして出国を差し止められたとする邦人からの連絡・相談が大使館にも複数件寄せられている

⑦薬物への注意
 フィリピンでは、ここ数年、薬物(特に覚醒剤)を持ち込もうとして,到着時に空港で身柄を拘束されたり、売買容疑で逮捕されたりする外国人が男女を問わず少なくない。また、閑静な住宅街で覚醒剤を密造していた外国人一味が逮捕されるなど外国人が絡んだ薬物事件が見られる。

⑨公共交通機関利用への注意
 国内の移動に当たっては、鉄道、バス(路線・長距離とも)、ジープニー、トライシクル(三輪車)、輪タク、船舶等公共の輸送手段は、庶民の足として親しまれている一方、運転が乱暴であったり、整備が十分でないなど信頼性・安全性に欠ける場合が少なくない。
 空港から市内への移動は、信頼のできるホテル等と契約しているタクシーを利用し、白タクは利用しない。

⑩その他(振り込め詐欺と思われる標的型メール)
 2012年以降、実際に存在する個人のメールアドレス(Yahooなどのウェブメール)を用いて本人になりすまし、その家族及び知人等に対して外国送金を依頼するといった振り込め詐欺と思われる事案につき報告が寄せられている。
 メールは英文で書かれており、その内容は、概ね、フィリピンを旅行中に強盗被害に遭い、所持金を盗られてしまい困っていると切り出した上で、帰国旅費,ホテル等の支払いにお金が必要であるとして、外国送金サービスや指定した口座に至急振り込みをして欲しいとするものである。
 万が一、この種の内容のメールを受信した際には,メールの内容を鵜呑みにせず、まずは本人に事実関係を確認する等十分警戒する必要がある。

 なお、詳細は日本外務省のウエブサイト(http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo.asp?infocode=2013T028)に掲載されている(13年3月8日の日本外務省発表などより)。