JBIC、ミンダナオの日系ニッケル事業を追加支援

2013/02/13

住友金属鉱山と三井物産に約100億円融資
一昨年襲撃事件発生のタガニートプロジェクト

 国際協力銀行(JBIC)は、2月13日、住友金属鉱山及び三井物産との間で、それぞれ融資金額9,200万米ドル限度(JBIC分)及び1,600万米ドル限度(JBIC分)、合計1億0,800万米ドル(約100億円、JBIC分)の貸付契約に調印した

  この融資は、いずれも民間金融機関との協調融資によるもので、JBICの「円高対応緊急ファシリティ」の下での資源の確保・開発の促進に資する案件である。

 具体的には、住友金属鉱山、フィリピンのMBAPR ホールディングス社(三井物産の100%出資子会社)及びニッケル・アジア社(NAC)が出資するタガニート HPALニッケル社(THPAL)が、ミンダナオ島北東部のタガニート地区において行うニッケル・コバルト混合硫化物(MS、ニッケル地金・コバルト地金の中間製品)の製造・販売事業のために、住友金属鉱山及び三井物産がTHPALに対して行う貸付に必要な資金を融資するものである。

 このプロジェクトは、住友金属鉱山が世界に先駆けて本格的な商業生産に成功した高圧硫酸浸出法(HPAL法)を用いて、低品位ニッケル酸化鉱からMSを生産するもので、住友金属鉱山はMSの全量(年間5万トン)を日本国内に引き取り、愛媛県新居浜市のニッケル製錬工場においてニッケル地金及びコバルト地金を生産する。

 ニッケルはステンレス鋼及び各種電子部品(半導体用合金・電池等)などの原材料として、コバルトはリチウムイオン電池の正極材や航空機等に用いられる特殊鋼の原材料として幅広い産業で使用されているが、日本は原料となる鉱石等の全量を輸入に依存している。
 世界的に需要の増大するステンレス鋼、電子部品や特殊鋼の原材料であるニッケル及びコバルト確保の必要性が高まる中、今回の融資はMSの生産を金融面から支援し、日本のニッケル及びコバルトの長期安定的な確保に寄与するものである。

 JBICは、このプロジェクトに関して、2011年7月にもTHPALとの間で、総額約7億5,017万米ドル限度の貸付契約を締結している。この融資においては、JBICがポリティカルリスクを負担しており、日本企業の海外進出に伴う現地リスクを軽減する役割を果たしている。

 なお、住友金属鉱山と三井物産は昨年11月に、「出資先であるTHPALが推進しているタガニート・ニッケルプロジェクトの投資額について見直しを行った結果、当初予定の13億米ドルから約15億9,000万米ドルに増加する見込みとなった」と発表している。

 このプロジェクトについては、2011年10月にプラント建設現場が武装勢力の襲撃を受け、建設中の設備が破損するなどの被害を受けた。このため、被害設備の補修を行ったほか、従業員、建設作業者等プロジェクト関係者の安全を確保するための諸対策を実施した。これらに要する費用に加えて、資材物価の上昇の影響、建設工事内容の詳細仕様の変更などにより、投資額は1億5,000万米ドル増加するとのことであった。さらに、為替による影響額約1億4,000万米ドルを加えると、投資額は約15億9,000万米ドルに達すると説明されている。

 なお、襲撃後安全確認のため工事を一時中断したことから工期に若干の影響を受けたが、その後工事は順調に進捗しており、同プロジェクトの立ち上げ時期は2013年秋と予定されている。

 JBICは、今後も、様々な金融手法を活用した案件組成やリスクテイク機能等を通じて、重要資源の開発・取得の促進を金融面から支援する方針である(13年2月13日の株式会社国際協力銀行プレスリリースなどより)。