2012年のGDP成長率6.6%へ加速(前年3.9%)

2013/01/31

鉱工業6.5%成長、サービス7.4%成長が牽引
第4四半期は6.8%で事前予想6.5%を上回る
 

 国家統計調整委員会(NSCB)は1月31 日、2012年第4四半期(10~12月)及び2012年年間のフィリピン国民経済計算統計(2000年基準)を発表した。

 [2012年第4四半期動向]

 2012年第4四半期GDP成長率(前年同期比実質ベース:以下同様)は6.8%で、前年同期の4.0%を大幅に上回った。前期(2012年第3四半期)の7.2%(改定値)からはやや鈍化したが、直前推定コンセンサスの6.5%を上回る高成長となった。GNI(国民総所得)成長率は5.4%で、前年同期の4.5%から拡大した。

 セクター別成長率は、農林水産業が4.7%、鉱工業が7.5%、サービス産業が6.9%であった。前年同期に比べ、農林水産業や鉱工業が急回復したことやサービス産業の成長率が一段と高まったことで、GDP伸び率が高水準となった。

 支出項目別成長率は、家計最終消費支出が6.9%、政府最終消費支出も9.1%と底堅く推移。固定資本形成は10.6%で前年同期のマイナス成長からプラスに転じた。設備投資意欲が活発化したことによる。。また、輸出が9.1%と好調。一方、GDPのマイナス勘定となる輸入は4.6%。輸出の回復がGDP成長率上昇の大きな要因の一つとなった。

 ASEAN諸国の最新データと比較すると、フィリピンの第4四半期GDP成長率6.8%は、ベトナム(5.4%)、シンガポール(1.1%)を上回っている。他のASEAN加盟国は未発表などで比較できない状況であるが、成長率上位にランクされると推定される。なお、中国の成長率7.8%には及ばなかった。

 [2012年通年動向]
 2012年年間のGDP成長率は6.6%となり、前年の3.9%を大幅に上回った。そして、政府当初目標5~6%の上限を上回る成長ぶりとなった。 一方、GNI成長率も5.8%で前年の3.2%を大幅に上回った。

 年間のセクター別成長率は農林水産業が2.7%(前年も2.7%)、鉱工業が6.5%(前年2.3%)、サービス産業が7.4%(前年5.1%)
。鉱工業が急回復したこととサービス産業の成長率が一段と高まったことで、GDP伸び率が大幅に拡大した。特に、建設業の成長率が14.4%で、前年のマイナス7.3%から急改善したことが目立つ。

 支出項目別伸び率は、家計最終消費支出が6.1%で前年の6.3%を下回ったが依然好調であった。政府最終消費支出は11.8%で前年の1.0%から急拡大。 一方、資本形成はマイナス4.4%%へと急減速したが、そのうち固定資本は8.7%へと拡大した。また、輸出は8.7%で前年のマイナス4.2%から急改善した。GDPのマイナス勘定となる輸入の伸び率は4.2%であった。輸出拡大もGDP高成長の要因の一つとなった。

 [2013年の政府見通し]
 フィリピン政府は、2013年の成長率は、2012年から更に高まると予想している。そして、政府目標6~7%の達成は十分可能であるといている。その根拠として、まず、公共事業拡大や官民連携(PPP)事業の本格化による建設・インフラ投資の増加が挙げられている。民間ベースでも、BPO(アウトソーシング)ビルや住宅建設が一段と活発化すると見込まれる。

 さらに、年前半は選挙特需で飲食料や広告支出などが増加しそうなこと、インフレ沈静化にともなう家計支出の一段の拡大、主要国景気の底打ちに伴うエレクトロニクス等の輸出回傾向なども成長率を押し上げることになりそうだ。農業部門において、年前半は、昨年12月に来襲した大型台風の影響が残りそうではあるが、2013年の天候は比較的良好と予想されており、堅調な成長が続くと期待されている(13年1月31日のフィリピン国家調整委員会発表より)。


産業・支出項目別GDP実質成長率(前年同期比)などの推移(2000年基準:単位:%)
項目 構成比 四半期成長率  年間成長率
12年 11年 12年 11年 12年
時期 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
GNI(国民総所得) 100.0 3.5 2.4 2.2 4.5 5.1 5.7 7.0 5.4 3.2 5.8
GDP(国内総生産) 76.5 4.9 3.6 3.2 4.0 6.3 6.0 7.2 6.8 3.9 6.6
NPI(海外からの純所得) 23.5 -0.1 -1.1 -0.8 6.2 1.7 4.6 6.3 0.9 1.0 3.3
セクター別内訳
 農林水産業 8.5 4.4 8.3 2.2 -2.5 1.0 0.6 4.2 4.7 2.7 2.7
   農林産業 6.9 6.3 11.7 4.3 -2.0 2.1 1.4 5.1 5.1 4.5 3.5
     米 1.7 15.6 13.2 19.7 -8.7 -1.1 10.1 13.5 10.2 5.9 8.0
     コーン 0.5 19.4 71.5 -6.0 -9.7 5.4 4.0 11.5 1.6 9.5 6.3
   水産業 1.6 -3.1 -2.4 -6.6 -4.8 -3.8 -2.5 0.0 3.3 -4.1 -0.7
 鉱工業等 24.5 7.3 -1.4 0.1 3.4 5.3 5.5 7.6 7.5 2.3 6.5
  鉱業 0.8 32.2 8.6 4.1 -16.3 -10.0 -6.8 -1.8 9.6 7.0 -3.7
  製造業 16.9 8.1 5.8 2.0 3.3 6.0 4.3 5.8 5.6 4.7 5.4
  建設 4.2 4.2 -24.2 -8.8 8.1 3.6 14.0 20.6 18.4 -7.3 14.4
  光熱水道 2.6 -0.6 -1.4 1.7 2.9 8.5 6.1 2.7 3.7 0.6 5.1
 サービス産業 43.5 3.6 5.6 5.2 5.9 8.1 7.4 7.5 6.9 5.1 7.4
  運輸倉庫通信 5.9 4.2 4.2 4.6 4.1 9.7 9.3 9.4 8.1 4.3 9.1
  商業・自動車修理等 12.8 2.8 2.5 4.5 3.4 7.8 7.8 8.2 6.4 3.3 7.5
  金融 5.2 6.4 11.6 1.4 1.5 8.7 7.0 8.6 7.2 5.2 7.8
  不動産等 8.4 6.2 8.4 8.7 13.6 7.9 8.1 7.9 7.7 9.3 7.9
支出別内訳
 家計最終消費支出 53.9 5.9 5.6 7.4 6.4 5.1 5.9 6.3 6.9 6.3 6.1
 政府最終消費支出 7.8 -15.8 6.0 8.9 7.6 20.9 6.8 12.0 9.1 1.0 11.8
 資本形成 14.8 36.1 -10.1 21.8 -3.8 -25.4 7.3 4.9 -1.4 8.1 -4.4
   固定資本 15.6 12.5 -9.5 1.0 -2.4 3.9 11.8 9.0 10.6 0.2 8.7
    建設 6.3 8.1 -21.5 -8.6 3.9 0.4 12.6 21.8 19.1 -6.2 13.7
    耐久設備 7.6 17.2 2.6 9.3 -7.9 5.4 12.8 0.9 4.5 5.2 5.7
 輸出等 36.4 3.9 0.2 -11.9 -8.2 10.9 8.3 6.7 9.1 -4.2 8.7
 輸入等(控除勘定) 36.5 11.2 -1.0 -1.8 -6.2 -3.2 10.3 4.9 4.6 0.2 4.2
(出所:国家統計調整委員会資料より作成)