フィリピン格付、投資適格へさらに前進
2012/12/20
S&P、20日に格付見通しを強気に引上げ
来年に格付の投資適格への昇格期待
米国系有力格付機関であるスタンダード&プアーズ(S&P)は、12月20日に、フィリピンの格付アウトルック(見通し)をステーブル(安定的)からポジティブ(強気)へと引き上げた。
格付け自体は、現行水準(長期債務の場合で「ダブルBプラス(BB+)」)が据え置かれた。「BB+」という格付は、投資適格最低基準である「トリプルBマイナス(BBB-)」の1段階下の格付である。したがって、格付自体は、依然投資非適格という範疇ではあるが、今回の格付アウトルック引き上げにより、格付の投資適格範疇入りが視野に入ったといえる。
格付見通しのステーブルは「当面格付の変更の可能性が薄い」という意味であり、ポジティブは、「近い将来に格付け自体が引き上げられる可能性がある」という意味である。そして、格付アウトルック引き上げのしばらく後に、格付自体の引き上げが行われるケースが多い。フィリピンの格付が一段階引き上げれば、念願の投資適格の範疇に入る。
S&Pは、今年7月4日に、フィリピンの外貨建て長期債務格付を一段階引き上げた。S&Pは、フィリピンの外貨建て長期債務格付をそれまでの「ダブルB(BB)」から「ダブルBプラス(BB+)」に引き上げた。ペソ建て長期債務格付に関しては「(BB+)」が据え置かれた。その時点では、格付アウトルックは双方ともに、「ステーブル」とされたが、今回ポジティブに引き上げられたことは、フィリピンにとって非常に重要な動きであり、投資適格に向けて更に前進したといえる。
S&Pはフィリピンの財政規律が改善傾向にあることを高く評価している。また、景気が安定的に拡大基調にあること、海外就労者(OFW)の送金寄与もあって経常収支が黒字を継続していること、対外支払い能力が強化されていること、政治的な透明性、安定性が改善していることなども評価している。
その一方で、フィリピンの一人当たりGDPは約2,600米ドル(2012年予想)と低水準であること、政府負債残高対GDP比率が38%(2012年末予想)と依然高水準であること、政府負債の40%が外貨建てで為替変動の影響を被りやすいことなどが、格付自体の引き上げの障害になっているとも指摘している。
これらの観点により、S&Pは、「歳入構造が改善し政府負債の縮小や負債の外貨建て依存度低下が実現したり、制度・構造改革が進展すれば、来年にもフィリピン格付が投資適格へ引き上げられることになろう」と結論づけている。ただし、「財政規律改善ピッチが鈍化したり、対外収支が著しく悪化するような場合は、格付けアウトルックがステーブルへと引き下げられることになろう」ともコメントしている(12年12月20日のスタンダード&プアーズ発表より)。