アヤラ系BPIによるPNB買収交渉、決裂との観測

2012/12/18

新たな最大銀行誕生シナリオ、一旦消滅の可能性
 

 アヤラグループの優良銀行バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)とルシオ・タン氏グループは、BPIによるルシオ・タン氏傘下の有力銀行であるフィリピン・ナショナル・バンク(PNB)買収交渉を行ってきた。

 

 BPIの財務基盤や収益力は業界屈指で、利益水準では業界トップ常連となっている。また、創業160周年という歴史を誇るとともに、フィリピンを代表する優良銀行と評されている。しかし、規模(総資産)においては、現時点ではBDOユニバンク、メトロバンクに次ぐ3位にとどまっている。
 
 9月末の速報値として、BPIの総資産規模は8,673億ペソと発表されている。BPIが買収を目指すPNBの総資産は3,207億ペソである。BPIとPNB合計では1兆1,880億ペソとなり、業界トップのBDOの1兆1,742億ペソを僅かながら上回ることになる。

 また、PNBは、同じルシオ・タン氏グループのアライドバンクとの合併プロセスの最終段階にある(存続会社はPNB)。アライドバンクの総資産は1,889億ペソであり、BPI、PNB、アライドバンク3行合計では1兆3,769億ペソとなり、BDOユニバンクをかなり上回ることになる。

 したがって、BPIによるPNB買収が実現すれば、BPIは名実ともにフィリピン銀行業界のトップとなる。このような銀行業界再編の動きは株式市場への刺激要因にもなってきた。

 しかし、両行の株主による独占的交渉期間は12月15日までとされている。この12月15日を過ぎても、買収に関する発表は全く行われていない。したがって、この買収交渉は立ち消え、あるいは決裂したのではとの観測や報道が拡がっている。

 この買収交渉の進展を問うフィリピン証券取引所(PSE)に対し、BPIは「根拠のない観測に対してコメントする立場にない。新たな進展があれば速やかかつ適切な情報公開を行う」と回答した。
 一方、PNBも「両行の株主による独占的交渉期間は終了した。PNBはその結果通知を受領していない。新たな進展があれば速やかかつ適切な情報公開を行う」と回答した(12年12月17日のフィリピン証券取引所回覧9097-2012号などより)。