中央銀行、不動産バブル防止へ動く
2012/11/25
投融資規制運用厳格化などとの報道
住宅不動産融資急増(23%増)等へ対応
フィリピンでの不動産ブームを背景に、金融機関の不動産融資が急増しており、中央銀行(BSP)が不動産バブル防止に向けて動きつつある。
既報の通り、BSPは10月1日に、2012年6月末の商業銀行(拡大商業銀行=ユニバーサル銀行を含む)銀行と貯蓄銀行の不動産投資・融資統計を発表した。それによると、商業銀行と貯蓄銀行の不動産融資(REL)残高合計は前年同期末比18.8%増の5,464億5,500万ペソと急増した。また、総融資残高に占める不動産融資比率は14.97%に達し、前年同期末の14.28%からさらに上昇した。
また10月25日には、6月末の商業・ユニバーサル(拡大商業)銀行、貯蓄銀行の住宅不動産融資残高(RREL)合計が、前年同期末比23.2%増の2,444億2,800万ペソ(速報値)に達したと報告されている。すなわち。急増している不動産融資のなかでも、特に住宅不動産融資の伸び率が著しいのである。
11月26日付けフィリピン各紙電子版によると、フィリピン中央銀行、不動産業界、エコノミストたちは、「不動産価格の上昇ピッチは高まっているが、不動産バブルというほどの状況ではない」よと判断している。しかし、現在の不動産ブーム、価格上昇が継続すると、4~5年内に不動産バブルに至る懸念はあるとのことである。
そのようななかで、中央銀行が不動産バブル発生防止に向けて動き出したとのことである。例えば、総融資残高に占める不動産融資比率規制の運用厳格化である。不動産融資の定義の厳格化などである。6月末の総融資残高に占める不動産融資比率14.97%であり、上限にはまだ余裕がある。中央銀行は20%という上限を引き下げるつもりはないが、不動産融資の定義を明確にし、個人向け融資などが不動産融資額から漏れないよう、監視体制を強める意向であるとのこと。
また、各金融機関の不動産融資動向に関する中央銀行への報告書の内容を、現状よりも詳細なものとして、総融資残高に占める比率だけでなく、対自己資本比率動向、不動産企業株式への投資なども注視していく方針のようだ。
商業・ユニバーサル銀行&貯蓄銀行の不動産融資動向(単位:百万ペソ)
項目 | 11年6月末 | 12年3月末 | 12年6月末 |
A.不動産融資(REL)残高 | 459,866 | 524,128 | 546,455 |
住宅不動産 | 198,377 | 232,570 | 244,428 |
商業不動産 | 261,489 | 291,558 | 302,027 |
REL不良債権(NPL)残高 | 25,920 | 26,763 | 24,202 |
住宅不動産 | 10,040 | 9,781 | 9,744 |
商業不動産 | 15,881 | 16,982 | 14,458 |
B.不動産投資(REI) | 12,421 | 14,012 | 15,186 |
不動産投融資(A+B)残高 | 472,287 | 538,141 | 561,641 |
総融資残高(TLP) | 3,221,263 | 3,451,167 | 3,651,478 |
総融資に占める不動産融資比率 | 14.28% | 15.19% | 14.97% |
不動産融資の不良債権比率 | 5.64% | 5.11% | 4.43% |
注1.数字は商業・ユニバーサル銀行、貯蓄銀行の合計
注2.総融資残高(TLP)には銀行間融資(IBL)は含まれていない
商業銀行、貯蓄銀行の住宅融資動向(単位:百万ペソ)
11年6月末 | 12年3月末 | 12年6月末 | |
住宅不動産融資残高(RREL) | 198,377 | 232,570 | 244,428 |
住宅不動産融資不良債権(NPL)残高 | 10,040 | 9,781 | 9,744 |
総融資残高(TLP) | 3,221,263 | 3,451,167 | 3,651,478 |
総不良債権残高(TNPL) | 129,377 | 132,441 | 126,455 |
総融資における住宅不動産融資比率 | 6.16% | 6.74% | 6.69% |
総不良債権における住宅不動産融資不良債権比率 | 7.76% | 7.39% | 7.71% |
総融資における住宅不動産融資不良債権比率 | 0.31% | 0.28% | 0.27% |
住宅不動産融資における不良債権比率 | 5.06% | 4.21% | 3.99% |
住宅不動産融資不良債権貸倒引当比率 | 33.82% | 38.65% | 42.99% |