フィリピン銀行業界、新たな再編の動き
2012/11/22
アヤラ系BPI、名実共にトップとなる可能性
PNBの買収交渉中、PNBはアライドと合併
既報の通り、11月21日付けインクワイアラー紙電子版などが、「アヤラグループの優良銀行バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)が、ルシオ・タン氏傘下の有力銀行であるフィリピン・ナショナル・バンク(PNB)の買収を視野に入れている」と報じた。
この報道の正否を問うフィリピン証券取引所(PSE)に対し、BPIは21日に「ルシオ・タン氏グループとの間で、PNB取得交渉を行っていることは事実である。交渉決着などの場合は適切かつ速やかな情報公開を行う」と回答した。
11月21日には、BPI、PNB双方ともに、PSEに対し自主的株式売買停止措置を申請、PSEもその申請を承認、両行の株式売買停止措置がとられた。
BPIの財務基盤や収益力は業界屈指で、利益水準では業界トップ常連となっている。また、創業160周年という歴史を誇るとともに、フィリピンを代表する優良銀行と評されている。しかし、規模(総資産)においては、現時点ではBDOユニバンク、メトロバンクに次ぐ3位にとどまっている。
ちなみに2012年度9カ月間(1月~9月)の決算速報では、BPIの純利益は前年同期比37%増の132億ペソへと大幅増加した。そして、BDOユニバンクとメトロバンクの各々105億ペソを大幅に上回り、業界トップの座を維持した。
一方、9月末の速報値として、BPIの総資産規模は8,673億ペソと発表されている。BPIが買収を目指すPNBの総資産は3,207億ペソである。BPIとPNB合計では1兆1,880億ペソとなり、業界トップのBDOの1兆1,742億ペソを僅かながら上回ることになる。
また、PNBは、同じルシオ・タン氏グループのアライドバンクとの合併プロセスの最終段階にある(存続会社はPNB)。アライドバンクの総資産は1,889億ペソであり、BPI、PNB、アライドバンク3行合計では1兆3,769億ペソとなり、BDOユニバンクをかなり上回ることになる。
したがって、BPIによるPNB買収が実現すれば、BPIは名実ともにフィリピン銀行業界のトップとなる。ただ、BDOユニバンクもこれまで何回ものM&Aを繰り返して業界最大行となっており、さらなるM&Aの機会を狙っている。
中堅クラスでも、急成長している商業銀行アジア・ユナイティッド・バンク(AUB、本店:パシグ市)が、買収によりそのネットワークを一段と拡充させつつある。AUBは、民間開発銀行でありPSEに上場しているアジア・トラスト・デベロップメント・バンク(ASIA、本店:ケソン市、中央銀行は貯蓄銀行と分類)の全資産・全負債を取得しつつある。
フィリピンは依然、銀行数が多すぎるとされており、今後も、買収や合併、すなわち再編の動きが続きそうである(12年11月21日のフィリピン証券取引所回覧8396-2012号などより)。