住友鉱、フィリピン・タガニート投資額約16億ドルに

2012/11/20

武装勢力襲撃などで13億ドルから増額、工事は順調

 

 住友金属鉱山と三井物産は、出資先であるタガニート HPAL ニッケル社(THPAL、本社:マニラ首都圏マカティ市)がフィリピンにおいて推進しているタガニート・ニッケルプロジェクトの投資額について見直しを行った結果、当初予定の13億米ドルから約15億9,000万米ドルに増加する見込みとなった。


 同プロジェクトについては、2011年10月にプラント建設現場が武装勢力の襲撃を受け、建設中の設備が破損するなどの被害を受けた。このため、被害設備の補修を行ったほか、従業員、建設作業者等プロジェクト関係者の安全を確保するための諸対策を実施した。これらに要する費用に加えて、資材物価の上昇の影響、建設工事内容の詳細仕様の変更などにより、投資額は1億5,000万米ドル増加する。

 さらに、2009年9月に同プロジェクト開始後、急速に進展したドル安の影響によって、米ドル建て以外で決済される建設費について為替差が増加しており、この為替による影響額約1億4,000万米ドルを加えると、投資額は約15億9,000万米ドルとなる見込みである。

 なお、襲撃後安全確認のため工事を一時中断したことから工期に若干の影響を受けたが、その後工事は順調に進捗しており、同プロジェクトの立ち上げ時期は2013年秋を予定している。

 今後世界のニッケル資源の確保には、低品位鉱石からのニッケル分の回収が必須であるが、HPAL(High Pressure Acid Leach:=高圧硫酸浸出)法は、従来ニッケル分の回収が困難であった低品位のニッケル酸化鉱からニッケルやコバルトを回収する技術であり、住友金属鉱山はこの技術分野において現在世界のトップランナーとなっている。
 
 住友金属鉱山は2005年4月にフィリピン・パラワン島のCBNC(コーラルベイ・ニッケル社、社長:藤村隆則氏)において、このHPAL技術を用いた本格生産を開始し、その後世界ではじめて計画通りの商業生産を成功させた。また、この成功をもとに2009年4月にはCBNC における第2工場の垂直立ち上げを完了し、同社の生産能力を年間1万トンから2万2千トン(ニッケル量換算)へ増加させた。

 このような実績を背景として、住友金属鉱山はHPAL技術を用いたタガニート・プロジェクトを推進し、年産約6万5千トンのニッケル生産能力を、2013年度には同10万トンとすることにより、世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を確固たるものにするとともに、従来から戦略目標としている「非鉄メジャークラス」入りに向けて邁進していく方針である。

 タガニート・プロジェクトにおいては、THPALがミンダナオ島北東部タガニート地区にて、ニッケル・コバルト混合硫化物( MS、ニッケル品位約57%)を年間約5万トン(ニッケル量3 トン、コバルト量で約2,600 トン)、30年間にわたり生産する。生産されるMS は全量住友金属鉱山が購入し、住友金属鉱山のニッケル工場(愛媛県新居浜市)において、電気ニッケルおよびコバルト生産の原料として使用する。

 THPALの現行資本金は40億9,500万ペソ、出資比率 は住友金属鉱山 62.5%、ニッケル・アジア22.5%、三井物産15%となっている(12年11月20日の住友金属鉱山株式会社と三井物産株式会社ニュースリリースより)。