SECの外資規制厳格化草案に反対の声

2012/11/12

外資誘致競争で一段と不利にとの懸念

フィリピン証券取引委員会(SEC)は、11月9日午前9時~11時に、首都圏マンダルヨン市グリーンヒルSECビルディング12階の多目的ホールにおいて、企業の外人保有比率規制に関する討論会を実施した。


 既報の通り、昨年、外国人のPLDT株式追加取得に端を発し、外人保有比率の定義が大きな問題となった。そして、最高裁が、「外人保有比率は、総発行株式数をベースにするのではなく、議決権のある株式のみをベースに算出すべき」との判決を下した(その後、反対意見も多く巻き起こり、最終決定には至らなかった)。
 そして今年に、最高裁は再度、外人保有比率は議決権のある株式のみをベースにすべきとの判断を下した。

 従来、フィリピンでは、総発行株式数をベースにすることで、外人保有比率上限規制遵守と見なされてきた。すなわち、議決権のない優先株式をフィリピン人向けに発行することで、フィリピン人保有比率を上昇させ、外人保有比率を上限内に抑えるということが許されてきたのである。

 PLDTも、議決権のある普通株式に限れば、外人保有比率は60%前後で推移、公益企業の外人保有比率上限40%を大きく上回る状況が続いてきた。ただし、フィリピン人向けに議決権のない優先株を多数発行しており、それを加えると、外人保有比率上限以下になるという状況であった。

 最高裁の判決を受けて、PLDTは、今年10月16日に、国内企業とされるBTFホールディングス向けに議決権付き優先株1億5,000万株を発行した。このBTFホールディングスの議決権付き優先株取得により、PLDTの外国人議決権比率は58.4%から34.5%に低下、最高裁判所が示した議決権基準においても、外国人保有比率は上限の40%を下回ったことになる。

 企業全般を管轄する証券取引委員会(SEC)も、最高裁の判決を受け、企業の外人保有比率規制の詳細な規則や運用基準を明確に示す必要に迫られている。SECは11月5日に、そのウエブサイト上において、外人保有比率規制に関する草稿を掲載(http://www.sec.gov.ph/notices/ogc%20-%20notice%205%20nov%202012.html)した。

 11月9日の討論会はそのSECの草稿に関する討議という形式で実施。SECの草稿においても、外人保有比率は議決権のある株式のみをベースに算出すべきとされており、その規則はPLDTのような公益企業だけでなく、全企業に適用される。ただし、そのベースでの外人保有比率規制遵守には5年間の猶予期間が設けられている。

 SECは公聴会への積極参加を呼び掛けるとともに、草稿に対する署名入りの意見書(住所もしくは納税番号明記)を、11月16日までにSECへ提出するよう呼びかけた。SECは各界との対話や公聴会などを経て、半年内に最終案を決定したいとしている。なお、一部で、既に厳格化規則が公布との報道がなされたが、まだ、草案提示の段階である。

 このSECの外資規制厳格化に関する草案に対しては、ビジネス界や市場関係者等の間から、「只でさえ周辺国との投資誘致競争で遅れを取っているフィリピンがさらに劣勢に立たされる」、「一貫性の無さが外国人投資家に不信感を与える」、「株式市場での該当銘柄売却による値崩れなどをもたらす」との懸念や反対の声が広まっているようだ