キリン出資のサンミゲル・ビール、上場廃止回避へ動く

2012/10/31

浮動株式基準達成期限の最低6カ月間延長を要請

 

 キリン・ホールディングス(キリン)出資のサンミゲル・ブリュワリー(サンミゲル・ビール=SMB)が、フィリピン証券取引所(PSE)上場廃止回避に向けて新たな動きを見せている。

 サンミゲル・ビール上場廃止懸念は、SMBがフィリピン証券取引所(PSE)の浮動株式比率基準(最低10%)未達成であることによる。PSEは、この基準を2012年以内に達成しないと上場廃止と罰金というペナルティーを課すと表明している。

 このSMB株式保有比率は、2012年9月末時点で、サンミゲル約51%、キリン・ホールディングス(キリン)約48.39%となっている。この大株主2社合計の保有比率は99.39%に達しており、浮動株式比率は僅か0.6%。

 このような状況下で、SMB大株主のキリンとサンミゲルは、SMBの浮動株式比率基準達成のための方策を討議してきた。第3者割当増資、大株主両社が保有株式を同数あるいが同率売り出し、あるいはサンミゲルのみが保有株式を売り出してキリンが筆頭株主になるなど様々な可能性が考えられてきた。

 しかし、両社間で保有比率縮小などで同意に至らず、サンミゲルのラモン・アン社長は、SMBのPSEからの自主的上場廃止を視野に入れていると何度も表明してきた。

 一方、SMBは、「浮動株式比率基準達成に向けて努力しているし方策はある。ただ時間が足りない。したがって、2012年末という達成期限を延長するよう要請することを検討している」と表明していた。

 そして、SMBはこのほどPSEに対して、2012年末という浮動株式比率基準達成期限を最低6カ月間延長するよう要請した。なお、親会社のサンミゲルはPSEの単独筆頭株主である。今後の動向が注目される。

 なお、SMBは2008年にサンミゲルの国内ビール事業スピンオフで発足、PSEに上場した。一昨年にはサンミゲルの海外ビール事業も取得している
 
 キリンは、サンミゲル本体への出資というかたちでフィリピンに進出した。当時はサンミゲル自身が国内ビール事業を行っていた。しかし、その後、国内ビール事業部門をSMBとして分社化、SMBは2008年5月12日にフィリピン証券取引所(PSE)に上場された。したがって、キリンは2009年前半に、保有していたサンミゲル株式約19.91%を売却、そのかわりにSMB社株式約48.39%を取得したという経緯がある(12年10月30日のフィリピン証券取引所回覧7868-2012号より)。