三菱東京UFJ銀行マニラ支店が為替等講演会

2012/10/26

今後1年間で1米ドル=38.50~43.00ペソと予想
 

 三菱東京UFJ銀行マニラ支店は10月25日に、毎年恒例の経済・為替関連講演会を開催した。   

 この講演は2部構成で、第1部が三菱UFJリサーチアンドコンサルティング執行役員調査本部長の五十嵐敬喜氏による「欧州債務危機とASEAN地域に与える影響」、第2部が三菱東京UFJ銀行マニラ支店為替資金課の善木茂雄課長による「フィリピン経済概況並びに今後のドルペソ為替相場見通し」という構成であった。

 第一部担当の五十嵐氏は、日本経済新聞夕刊の「十字路」などに定期寄稿、テレビ東京系の「ワールドビジネスサテライト」(平日23時~24時)のレギュラーコメンテーターを務めるなど、テレビ、新聞。経済雑誌への出演、寄稿なども多い。

 五十嵐氏は、欧州債務危機の解決は容易ではなくかなり長期にわたる可能性が高い、フィリピンもユーロ圏への輸出減少などの影響を受けていると説明した。フィリピンのユーロ圏への輸出比率は2008年で16%、2010年で13%程度でありASEAN主要国の中では最も高い。ただし、2010年のフィリピン経済の輸出依存度(輸出/名目GDP)は34.8%でインドネシアの24.8%に次いで低く、結果として、欧州債務危機のフィリピン経済へ影響は限定的なものとなっている。

 五十嵐氏は、日本円の動向に関して、欧州債務危機解決が容易でないことや米国の雇用回復の鈍さなどにより、短期的には本格的なな円安は考えにくいとの予想を示した。もっとも、政府・日銀の介入などを勘案すると急激な円高シナリオも描けないとのことである。しかし、長期的には、「政府負債残高の高さなどが円安につながる。特に、消費税増税分が政府負債削減に充当されないような場合には、大幅な円安をもたらすことになろう」との見解を示した。

 善木氏による第2部の「フィリピン経済概況並びに今後のドルペソ為替相場見通し」では、フィリピンは今後の輸出減速懸念はあるものの、安定的な経済成長やインフレ沈静化、海外からの資金流入継続などにより株式市場やペソは堅調に推移、国際収支や外貨準備高も堅調であることなどが紹介された。

 2012年のペソは、欧州債務危機の影響を受けながらも、堅調なファンダメンタルズ、海外からの旺盛な資金流入により1米ドル=41ペソ台にまで上昇した。10月12日現在の年初からの対米ドル上昇率は、アジア通貨の中では、シンガポールドルと並ぶ最高の水準となっている。
 
 そのような状況下での来年度ドル相場予想に関して、「中央銀行の介入によりペソ高の速度は緩やかになると思われるが、世界経済鈍化の中でも増加しているOFW送金がサポート要因となり1米ドル=40ペソ台割れを目指す」、「経済成長率は今年に比べて若干の鈍化が予想されるものの、海外からの資金流入が下支え」、「外貨準備高の増加による支払能力も向上、仮に景気減速に陥った場合でも、財政出動の余地は大きいことから大崩れの可能性は小さい」とのメインシナリオや、以下のような、期間別米ドルペソ相場予想が示された。


・2012年第4四半期(10月~12月):1米ドル=40.500~42.500ペソ(41ペソ台を中心とした高値圏で推移)
・2013年第1四半期(01月~03月):1米ドル=40.000~43.000ペソ(足場固め)
・2013年第2四半期(04月~06月):1米ドル=39.500~42.500ペソ(下値を切り上げつつ40ペソ台割れを試す)
・2013年第3四半期(07月~09月):1米ドル=39.000~42.500ペソ(ペソ上伸)
・2013年第4四半期(10月~12月):1米ドル=38.500~42.000ペソ(ペソ堅調)


 リスク要因としては欧米景気回復のもたつき、中国経済の急ブレーキ、落ち着きを見せつつある欧州債務問題の再燃(ギリシャ・スペイン)が挙げられた。その一方、ミンダナオ島和平交渉進展がプラス要因となる可能性があるとの見解も示された(12年10月25日の三菱東京UFJ銀行マニラ支店講演会やその資料などより)。