フィリピンの昨今の台風・水害事情
2012/10/11
工業団地、雨に比較的強く機能マヒ回避
日商サイトに西澤JCCIPI事務局長執筆
日本商工会議所ウエブサイトの10月10日付けのニュースライン海外情報レポートに、「昨今の台風・水害事情(フィリピン)」というタイトルの記事が次のように掲載されている。執筆者はフィリピン日本人商工会議所(JCCIPI)の西澤正純事務局長である(以下、ほぼ原文のまま)。
7月下旬に襲来した台風GENERから8月中旬まで続いた長雨は、フィリピン全土で死者100人超、被災住民400万人超という大きな被害をもたらした。もともとフィリピンでは、台風の後、南西モンスーンの影響でそのまま天気がぐずつくことが多いが、今回の雨は当地のフィリピン人も驚くほど長く続いた。本原稿を執筆している8月末時点でも、低い土地で水が引かない地域もある。こうした被害を受けて、一部の在比日系企業が義捐金の拠出を決めた。
当初、昨年のタイ・バンコクでの洪水被害が頭をよぎって心配になり、工業団地関係者等に被害の状況等をヒアリングしたが、一様に雨は問題ないとのことであった。工業団地はもともと台風がやってくることを想定しており、ある程度の水害を見越して高台に立地していることが多く、例えば、昨今、キャノン、ブラザー工業、村田製作所といった大手製造業が相次いで進出を決めたバタンガス州にある工業団地ファースト・フィリピン・インダストリアルパークの標高はメトロマニラの標高より約100メートル高い。
今回の長雨についても、日系企業では工業団地道路が冠水して出勤できない、マニラ湾沿いの道が冠水して多少物流に影響が出たという話はあったが、会員企業の事務所や工場に大きな被害が出たという報告は今のところ寄せられていない。ただ、在フィリピン歴が長い工場経営者によると、雨には比較的強いが、風が想定より強く吹くと工場の屋根が飛んだり、電柱が倒れる等の被害が想定されるので、異常気象が取り沙汰される昨今、台風の動向には常日頃から気を付けているという。
フィリピンでは雨季と乾季があり、台風がやってくるのは主に雨季の間(6月から11月)である。台風はフィリピンの東の海域で発生しルソン島の北部をかすめて台湾や日本へ向かうか、ルソン島、ビサヤ諸島の地域を横切り大陸に出るかのいずれかのパターンの進路を取ることが多い。
昨年1200人を超える死者を出すなど甚大な被害をもたらした台風センドンは、通常台風が通過しないミンダナオ島北部を通過したため、住民の備えがなく大きな被害を出すことになった。
台風に対する警戒警報は風の強さをベースにシグナル1からシグナル4までの4段階となっており、シグナルの強弱に応じて、学校が休校になったり、政府機関が休業となったりする。なお、民間企業の社員の出社判断は各企業の経営判断に委ねられている。
一方で、台風や水害のイメージが強いフィリピンであるが、乾季はほとんど雨が降らない。乾季のうち、雨季が明けたばかりの12月から2月はクールドライシーズンと呼ばれ、夏の軽井沢のように快適でさわやかな気候となる。また、3月から5月はホットドライシーズンと呼ばれる。フィリピンの真夏であり、学校は夏休みに入る(12年10月10日の日本商工会議所ニュースラインより)