日本、今後もミンダナオ和平推進を全面支援へ
2012/10/09
フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)がミンダナオ和平に関する「枠組み合意」に達したこと受けて、玄葉光一郎外務大臣は、「心から歓迎する。フィリピン政府及びMILF双方の粘り強い交渉努力並びに仲介役であるマレーシア政府の貢献に対し、心から敬意を表する」との談話を発表した。
そのなかで玄葉大臣は「この枠組み合意は、いくつかの重要な課題を今後の交渉に委ねており、最終合意に至るまでには、これまで以上の困難を伴うことが予想される。日本としては、最終合意の早期実現に向けて、交渉当事者双方が枠組み合意の内容を着実に実施し、粘り強い交渉努力を継続することを強く希望する」とも強調した。
そして、「日本は、国際監視団(IMT)への開発専門家の派遣、元紛争地域における経済協力プロジェクトの集中的実施(J-BIRDJapan-Bangsamoro Initiatives for Reconstruction and Development)、和平交渉における国際コンタクト・グループ(ICG)への参加等を通じ、ミンダナオ和平プロセスを引き続き全面的に支援していく」と表明した。
<ミンダナオ和平交渉について>
(1)フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平交渉は、2001年にマレーシアを仲介役として開始。2003年に停戦合意に至り、2004年からマレーシアを団長とする国際監視団(IMT)が活動を開始。これにより和平合意に向けた交渉は進展したものの、2008年8月に最大の懸案である土地問題の解決をめぐる国内調整に失敗し、武力衝突が再燃。その後、2009年12月の国際コンタクト・グループ(ICG)結成を契機として、2010年2月に和平交渉が再開。2010年6月に発足したアキノ政権下でも和平交渉は継続しており、最終和平合意の実現が期待される。
(2)日本は,ミンダナオ和平が地域の平和及び安定に寄与するものであるとの認識の下、(1)IMTの社会経済開発部門への開発専門家派遣、(2)元紛争地域に対する人間の安全保障・草の根無償資金協力など経済協力プロジェクトの集中的実施(J-BIRD)、(3)和平交渉にオブザーバー参加をして助言を行う国際コンタクト・グループ(ICG)への参加等を通じ、ミンダナオ和平プロセスの進展及びミンダナオ地域の復興・開発に貢献。なお、2011年8月4日には、アキノ大統領及びムラドMILF議長が訪日し、東京近郊でミンダナオ和平問題の解決に向けた非公式会談が行われた。
(3)10月7日午後、アキノ大統領が記者会見を行い、2日からマレーシア・クアラルンプールで行われていた交渉の結果、「枠組み合意」に達した旨を発表した。「枠組み合意」の詳細については、数日中に対外発表される由であるが、今般の「枠組み合意」では、「移行委員会(TC:」が設立され、そこで基本法の作成。憲法改正案の作成、開発プログラムの調整を行うこととされており、その後,基本法の法制化、ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM:)の廃止、移行機関(BTA: Bangsamoro Transition Authority)の設立を経て、2016年に「新たな政治的領域(NPE: New Political Entity)」(自治政府)が発足することとされている(12年10月7日の日本外務省発表より)。