テラモーターズ、フィリピンで電動三輪車製造へ

2012/09/16

増資など準備進展、12月に2億円で現地法人設立
本社株主には出井ソニー元会長ら各界の有力者        
日本発のグローバル電動車両(EV)ベンチャーに

 電動バイクの開発・製造・販売を行うテラモーターズ(本社:東京都渋谷区)は、今年12月にフィリピンのマニラに現地法人(資本金2億円)を設立し、電動三輪タクシー(電動トライシクル)事業に参入する事を決定した。

 

 

 東南アジア新興国でよく見かける三輪タクシーはフィリピンではトライシクルと呼ばれる。現在フィリピンでは、エンジンバイク(約半数が排気ガスを特に多く排出する2ストローク車)を改造して客員用サイドカーを取り付けた約350万台のトライシクルが市民の生活の足(公共交通機関の75%)として活用されている。

 しかし、排気ガス問題や燃料価格の高騰から、トライシクル代替の交通手段の確保が急がれている。フィリピン政府は自国産業育成という観点からも、電動トライシクルの普及促進を目指す「市場転換プロジェクト(総額215億ペソ)」を始動させつつある。

 このプロジェクトは、アジア開発銀行(ADB)の支援(各自治体へ融資)によるもので、合計215億ペソを投入、全国で350万台以上稼働中とされているトライシクルのうち、2016年までに10万台を電動トライシクルに置き換えるというもの。それにより、トライシクルの燃料消費量の2.8%(石油に換算して56万926バレル)削減を目指す。今年10月には、まず5,000台の電動トライシクル導入のための入札を実施する予定であり、複数の日系企業・グループが応札する見込みである。

 このような状況下で、今回テラモーターズは、まずADB支援プロジェクトへの応札による事業獲得を目指す。それとは別に、現地民間銀行からの融資による事業展開、すなわち2つのスキームで、フィリピン電動トライシクル事業に参入する。

 この2つのスキームにおいて、テラモーターズは現地大手アセンブラーと業務提携し製造を行い、これまで培ってきた電動車両の開発・設計、大量生産、品質管理などのノウハウを活用していく。また、日系大手自動車メーカーにて長年東南アジアで品質管理を担当していた技術者を新しく採用、フィリピンでの量産に向けての人材を獲得した。

 また、フィリピン事業参入に先駆けて、9月14日を払込期日とする総額2億2,810万円の第三者割当増資を実施。割当先は、みずほキャピタルと以下のような複数の個人協賛者である。
・福武 總一郎氏 :ベネッセホールディングス取締役会長, 電気自動車普及協議会(APEV)会長
・山元 賢治氏   :元アップルジャパン代表取締役兼米国アップル社バイスプレジデント
・久保 尚平氏   : トヨタカローラ南海代表取締役社長
・石割 由紀人氏 :石割公認会計士税理士事務所代表

 なお、テラモーターズの設立は2010年4月で現行資本金(準備金も含む)は6億6210万円。2年半という非常に若い企業ながら、2011年度の電動バイク販売台数は約3,000台で日本のトップ電動バイク企業へと躍進、今年度は倍増の6,000台、金額にして約10億円に達する見込み。ベトナムホーチミン市ロンアン省や中国の浙江省奉化市経済開発区に工場を有している。

 現在の株主は代表取締役社長の徳重徹氏のほか、みずほキャピタル、ウエルインベストメント(早稲田VC)、出井伸之氏 (ソニー元会長)、辻野晃一郎氏 (グーグル日本法人元代表取締役社長)、村井勝氏 (コンパックコンピュータ㈱元社長)、平内優氏 (クオンタムリープ代表取締役社長)、今回の第3者割当増資に応じた福武 總一郎氏らである。

 テラモーターズは2012年中小企業長官賞を受賞したほか、レッドへリング・アジア100社に選出されるなど各界からの評価、注目度も急速に高まっている。レッドへリングとは、世界の未上場企業の中で特に優れた新しい技術を持つ企業を選定するもので、ベンチャー企業の登竜門として世界的に権威ある賞として知られている。

 テラモーターズは今後も、国内市場の拡大を推進するとともに、かねてからのビジョンである日本発のグローバル電動車両(EV)ベンチャーの創業に向けて、フィリピンを含む海外市場を積極的に開拓するほか、様々な国家的プロジェクトへの参画を行っていく。そして、10年内の売上高1,000億円達成を目指す(12年9月14日のテラモーターズ株式会社ニュースリリースなどより)。