トヨタ、新興国販売比率45%へ上昇(10年前19%)

2012/09/14

フィリピンの「タマラオ」、創世期から重要な役割

  トヨタ自動車は先頃、2012年版アニュアル・レポートを発表した。この2012年版には「新興国におけるトヨタの取り組み」という特集が掲載されている。



 それによると、トヨタの2011年における新興国の販売比率は45%に達し、2001年の18.8%から10年間で2.4倍に、2008年の35.6%からも3年間で10%上昇している。グローバルビジョンで掲げた、2015年までに50%を達成するという目標の早期実現に向けて、新興国で築き上げたグローバル供給体制をさらに強化するとともに、アジアを重要拠点としたより一層の現地化と、新興国専用コンパクトカーの積極的な投入による販売拡大に取り組む方針である。

 トヨタ販売台数と新興国販売比率(単位:千台)

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
世界販売 5,262 5,519 6,070 6,708 7,268 7,922 8,429 7,996 6,980 7,528 7,097
新興国販売 987 1,142 1,417 1,695 2,027 2,246 2,658 2,849 2,646 3,145 3,193
新興国販売比率 18.8% 20.7% 23.3% 25.3% 27.9% 28.4% 31.5% 35.6% 37.9% 41.8% 45.0%
 (出所:トヨタ自動車2012年版アニュアル・レポートより)

 トヨタの新興国における取り組みの歴史は古く、特に、ASEAN諸国には1960年代から輸出と現地生産を推進してきた。1970年~1990年までの「創世期」の段階においては、1976年にフィリピンにビジネス多目的車(BUV)の「タマラオ」を導入し、翌年にはインドネシアに「キジャン」を導入した。

 フィリピンやインドネシアは、大家族主義でクルマは事業用と家庭用の兼用で使用できることが必要であり、未舗装の道路も多いことから多目的バンタイプのクルマが好まれた。また低廉なクルマづくりを行うためにプレス設備は導入せず、鉄板を折り曲げ、溶接してボディを製作する手法を採用するなど、現地スタッフやサプライヤーとともに新商品を開発してきた。このように「創世期」においては、自動車産業のインフラ整備とサプライヤーの発掘、育成に取り組んだ。

 トヨタの海外ビジネスは、このような「創世期」などを経て、「世界規模での効率的な生産・供給」へと進展している。グローバルな生産・供給を担う新興国においては、その生産能力増強をめざし、投資を拡大している。
 インドでは2009年に「フォーチュナー」、2010年には「カローラディーゼル」と「エティオス」の生産を開始し、それに伴い工場に対する投資を拡大している。ブラジルでは2007年に「カローラFFV」の生産を開始、以降、順調に販売を拡大し、2012年後半には、コンパクトカーの新工場を立ち上げる予定である。

 これらの結果、新興国における生産能力は、2013年には国内生産台数と同レベルの約310万台を見込むなど、2000年の生産実績54万台、2005年の同135万台、2010年の同238万台から急ピッチで拡大している。

 今後の取り組みに関して、中国・インド・パキスタンを除く「アジア総市場」については、2012年はタイ洪水の影響から回復し、2011年を上回る需要増となることを見込んでいる。中長期的にも、経済発展に伴い、市場成長が予想されることから、アジア・オセアニアにおいて、現在の年間販売台数160~170万台から、将来的には200万台以上を目指す

 トヨタ自動車の文化施設であるトヨタ博物館(愛知県長久手市)では、トヨタ創立75周年を記念し10月20日から来年4月14日まで特別企画展「TOYOTA 75」を開催する。そして、約50台という過去最大規模のトヨタ車の歴史展示が行われる。上記の新興国事業「創世期」から重要な役割を果たしたきたフィリピンの「タマラオ」(1977年車)も展示される。

 なお、トヨタ自動車のフィリピンの拠点であるトヨタモーター・フィリピンズは、2011年まで10年連続でフィリピン自動車市場での三冠王(総合販売台数、商用車販売台数、乗用車販売台数いずれもトップ)という偉業を達成。2012年年初8カ月の市場シェアも34%で断トツとなっている(トヨタ自動車株式会社2012年版アニュアル・レポートなどより)。