フィリピンの競争力、65位(144カ国中)へ急上昇

2012/09/05

一昨年85位、昨年75位、2年連続で10ランク急改善
タイやインドネシアの後塵も、ベトナムを抜き返す
依然汚職や官僚主義、インフラ未整備等が障害に
 

 世界経済フォーラムは9月5日に、最新版(2012~13年)『国際競争力報告書』を発表した。最新版競争力ランキングは、世界144カ国・地域(昨年は142カ国・地域)の経済データや、経済界や研究機関へのアンケート調査をもとに算出された。


 『国際競争力報告書』の総合的な競争力ランキングには、コロンビア大学のザビエル・サラ=イ=マーティン教授が世界経済フォーラムのために開発し2004年に導入された世界競争力指数(GCI) が用いられている。GCIは競争力に関する3つのサブインデックス(12分野、110項目)をもとに設計されており、世界の国々のすべての発展段階における競争力の全体像を示す。

 3つのサブインデックスとは基礎的指標、効率性強化指標、革新と洗練性指標である。基礎的指標は制度機構、インフラ、マクロ経済環境、保健および初等教育という4分野、効率性強化指標は高等教育および訓練、商品市場効率、労働市場効率、金融市場の高度化、技術的即応性、市場規模という6分野、革新と洗練性指標はビジネスの高度化、事業革新という2分野で構成されている。

 2012~13年版での競争力第1位はスイス(昨年1位)、2位シンガポール(同2位)、3位フィンランド(同4位)であった。以下、4位スエーデン(同3位)、5位オランダ(同7位)、6位ドイツ(同6位)、7位米国(同5位)、8位英国(同10位)、9位香港(同11位)、10位日本(同9位)と続く。日本は財政悪化にくわえ電力供給不安定化が響いた。、 

 BRICsを形成する中国は29位(昨年26位)、ブラジルは48位(同53位)、南アフリカは52位(同50位)、インドは59位(同56位)、ロシアは67位(同66位)とランクされた。中国はこの数年間安定した進展を見せていたものの今回は3ランク下げた。

 最下位である144位にはアフリカのブルンジ(同140位)がランクされた。債務問題で揺れているギリシャは96位で、昨年の90位、一昨年の83位、その前の71位から大幅低下が続いている。

 30位以内にランクされたアジア勢は、ベスト10入りのシンガポール、香港、日本のほか、13位の台湾(同13位)、19位の韓国(同24位)、25位のマレーシア(同21位)、28位のブルネイ(同28位)、29位の中国である

 ASEAN諸国は、上記のように2位のシンガポール、25位のマレーシア、28位のブルネイのほか、タイ38位(同38位)、インドネシア50位(同46位)、フィリピン65位(同75位)、ベトナム65位(同75位)、カンボジア85位(同97位)と続く。

 フィリピンの総合順位65位は、昨年の75位、一昨年の85位から2年連続での10ランク急上昇、ベトナムを抜き返したことが注目される。

 フィリピンのサブ・インデックス順位は、基礎的指標が80位(制度機構94位、インフラ98位、マクロ経済環境36位、保健および初等教育98位)で、低水準ながら昨年の99位から大幅上昇した。効率性強化指標は61位(高等教育および研修64位、商品市場効率86位、労働市場効率103位、金融市場の高度化58位、技術的即応性79位、市場規模36位)で昨年の70位から上昇した。革新と洗練性指標は64位(ビジネスの高度化49位、技術革新94位)で、昨年の74位から上昇した。

 個別分野別では、テロ対策コストの軽さ126位、港湾インフラ120位、交通インフラ112位、結核感染対策126位、起業手続きの容易さ131位、通関手続きの容易さ126位などが特に厳しい評価
となっている。

 また、フィリピンでのビジネスにおける最大の問題点はという調査では、汚職との回答(19.3%)がトップとなっている。以下、政府官僚組織の非効率性(17.2%)、インフラ未整備(16.2%)、政策の一貫性のなさ(9.2%)、税金の高さ(6.0%)と続く(12年9月5日の世界経済フォーラム発表より)。