キリンとサンミゲルの協議、依然未決着
2012/08/31
サンミゲル・ビール浮動株式比率問題
売出などによる上場廃止回避策を模索
フィリピン証券取引所(PSE)の浮動株式比率最低基準(10%)達成の最終期限が接近してきた。
PSEは、PSE上場企業に対し、この浮動株式比率最低基準を昨年11月30日までに達成するよう指示した。2012年は猶予期間となるが、2012年以内に達成しないと上場廃止と罰金というペナルティーを課せられる。7月16日現在、この浮動株式比率最低基準未達成企業は27社であると報じられている。
主な未達成企業のなかで目立つのは、サンミゲル・ビール(浮動株式比率0.61%)、サンミゲル・ピュアフーズ(同0.08%)、サンミゲル・プロパティーズ(同0.06%)というサンミゲル・グループ企業の浮動株式比率の低さである。
特に注目されるのは、キリン・ホールディングス(キリン)出資のサンミゲル・ビール(SMB)の動きである。このSMB株式保有比率は、2012年6月末時点で、サンミゲル約51%、キリン・ホールディングス(キリン)約48.39%となっている。
このような状況下で、SMB大株主のキリンとサンミゲルは、SMBの浮動株式比率基準達成のための方策を討議してきた。第3者割当増資、大株主両社が保有株式を同数または同率売り出し、あるいはサンミゲルのみが保有株式を売り出してキリンが筆頭株主になるなど様々な可能性が考えられてきた。
しかし、8月末時点でも両社間で保有比率縮小などで同意に至らず、協議が継続されている。サンミゲルのラモン・アン社長は、SMBのPSEからの上場廃止を視野に入れ始めたと何度も報じられている。その一方で、ラモン・アン社長は、現在論議中の優先株の取り扱いに関して、保有比率算出ベースに優先株を加えることをPSEに認めさせることなどで、SMB上場廃止回避を模索しているとも報じられている。
ともかく最終期限まであと4カ月間であり、キリンとサンミゲルの協議の動向が注目される
なお、キリンは、サンミゲル本体への出資というかたちでフィリピンに進出した。当時はサンミゲル自身が国内ビール事業を行っていた。しかし、その後、国内ビール事業部門をSMBとして分社化、SMBは2008年5月にフィリピン証券取引所(PSE)に上場された。したがって、キリンは2009年前半に、保有していたサンミゲル株式約19.91%を売却、そのかわりにSMB社株式約48.39%を取得したという経緯がある(12年8月30日のフィリピン証券取引所回覧6375-2012号より)。