S&P、フィリピン格付をBB+へと引き上げ

2012/07/04

 財政改善等を評価、投資適格にあと一歩へ

 米国系有力格付機関であるスタンダード&プアーズ(S&P)は、7月4日に、フィリピンの外貨建て長期債務格付を引き上げた。


 S&Pは、フィリピンの外貨建て長期債務格付をこれまでの「ダブルB(BB)」から「ダブルBプラス(BB+)」に引き上げた。ペソ建て長期債務格付に関しては「(BB+)」が据え置かれた。格付見通し(アウトルック」は双方ともに、「ステーブル(安定的)」となっている。

 S&Pは2010年11月12日に、フィリピン外貨建て長期債務格付格付をそれまでの「ダブルBマイナス(BB-)」から、「ダブルB(BB)」へと引き上げた。そして昨年12月16日に、格付け見通しを「ステーブル」から「ポジティブ(強含み)」へと引き上げ、今回の格付再引き上げに至ったのである。

 S&Pはフィリピンの財政規律が改善傾向にあることを大きく評価した。また、景気が安定的に拡大基調にあること、海外就労者(OFW)の送金寄与もあって経常収支が黒字を継続していること、対外支払い能力が強化されていることなども格付引き上げの要因となった。
 
 「BB+という格付」は、投資適格最低基準である「トリプルBマイナス(BBB-)」より1段階下の格付である。依然、投資非適格という範疇ではあるが、フィリピンが投資適格基準にあと一歩と迫ったことになる。

 S&Pによるフィリピン格付引上げを受けて、プリシマ財務相は「アキノ政権下における格付や格付見通しの引き上げは8回に達した。アキノ政権の景気の安定的拡大、財政規律改善、包括的経済成長に向けての努力が評価された結果であり、これらの努力継続意欲が駆り立てられる」とコメントした。

 ちなみに、S&Pとならぶ米国系有力格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)のフィリピン格付は「Ba2]であり投資適格最低基準「Baa3」の2段階下の水準である。ただし、今年5月29日に格付見通しをポジティブに引き上げており、格付自体の引き上げが期待される状況である。
 
 一方、欧州系有力格付け機関フィッチ・レーティングス(フィッチ)は昨年6月に、フィリピン格付を「BB+」に引き上げた。したがって、フィッチのフィリピン格付けは投資適格最低基準の一段階下という評価となっている。

 すなわち、世界の3大格付け機関のうち、S&Pとフィッチのフィリピン格付が投資適格最低基準の一段階下、ムーディーズが二段階下となっている。それに対し、日本格付研究所や格付投資情報センター(R&I)のフィリピン格付けは、「トリプルBマイナス(BBB-)」となっており、欧米勢よりもフィリピンを高く評価している(12年7月4日スタンダード&プアーズ発表などより)。