日比外相、南シナ海問題の外交的解決で一致

2012/06/29

フィリピン沿岸警備隊の能力向上支援も合意

 6月28日18時半から約60分間、玄葉光一郎外務大臣は、外務省賓客として訪日中のデル・ロサリオ・フィリピン外務大臣との間で日・フィリピン外相会談を行い、続いて約90分間にわたり主催夕食会を行った。概要は以下のとおり。



1.冒頭
(1)玄葉大臣は、デル・ロサリオ大臣の訪日に歓迎の意を表するとともに、昨年9月のアキノ大統領訪日のフォローアップが着実に進展していることを評価しつつ、デル・ロサリオ外相と緊密に連携し、「戦略的パートナーシップ」にふさわしい関係を構築していきたいと述べた。
(2)これに対し、デル・ロサリオ大臣は、日本は友好的かつ模範的なパートナーであり、共通の価値観、課題及び願望があり、それらを踏み台として二国間関係を強化していきたいと述べた。

2.二国間関係
(1)経済・経済協力
ア 玄葉大臣は、東日本大震災後の日本の再生にはフィリピンを含むアジア諸国の活力の取り込みが不可欠であるとして、フィリピンとの貿易・投資の一層の拡大に対して期待感を示すとともに、経済連携協定(EPA)の円滑な実施・運用に向けて互いに取組を強化していくことが重要であり、看護師・介護福祉士候補者の派遣・受入れについても、その円滑な実施に向けて双方で協力していきたいと述べた。
 また、玄葉大臣は、フィリピンの経済発展に貢献すべく、ODAの積極的活用も通じて投資環境改善やインフラ整備を支援していく決意を表明するとともに、フィリピン側においても、投資環境改善に向けた一層の努力をお願いしたいと述べた。
イ これに対し、デル・ロサリオ大臣は、日本からのODAがフィリピンの開発計画に沿ったものであり、その経済成長に多大な貢献を行ってきたことに謝意を述べるとともに、投資環境の改善について説明があった。また、デル・ロサリオ外相から、EPAの円滑な実施・運用に向けた取組を強化すると述べるとともに、看護師・介護福祉士候補者の受入れに関する日本政府の取組を評価し、今後も協力していきたいと述べた。

(2)人的交流
ア 玄葉大臣は、青少年交流、双方向の観光促進など人的交流の重要性を指摘するとともに、昨年9月のアキノ大統領訪日の際に野田総理から招待を表明したフィリピンの高校・大学生400人から成る「東北友好親善大使」が本年4月から5月にかけて成功裡に訪日したことを紹介するとともに、東日本大震災からの日本の再生に対する理解増進のため、「キズナ強化プロジェクト」として、来年3月までにフィリピンの高校・大学生285名を招へいする旨を表明した。
イ これに対し、デル・ロサリオ大臣は、人的交流、特に両国の将来を担う青少年交流の促進が両国関係の安定的な発展に資するものであるとして、400名の「東北友好親善大使」など日本政府による多くの青少年の招へいに謝意を表した。

(3)その他
ア 海上安全保障分野における協力に関し、両外相は、本件が昨年9月のアキノ大統領訪日の重要なフォローアップ事項であることを確認するとともに、フィリピン沿岸警備隊の能力向上支援に関する協力及び第2回日・フィリピン海洋協議の早期開催で一致した。
イ ミンダナオ和平に関し、玄葉大臣から、ミンダナオ和平は地域の平和と安定にとって重要であるとして、アキノ政権の取組を支持するとともに、引き続き和平プロセスを全面的に支援していく考えを表明した。これに対し、デル・ロサリオ大臣から、ミンダナオ和平に対する日本の積極的な支援に深甚なる謝意が表明するとともに、モロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平交渉の現状について説明が行われ、アキノ大統領による年内の和平合意達成への決意が示された。

3.地域情勢
(1)両外相は、互いに「戦略的パートナー」として、地域における様々な枠組みで連携していくことで一致した。特に、両外相は、東アジア首脳会議(EAS)を地域の共通理念や基本的ルールを確認し、具体的な協力につなげる首脳主導のフォーラムとして発展させていくことが重要であるとの認識で一致した。
(2)また、両外相は、南シナ海をめぐる問題は地域の平和と安定に直結する国際社会全体の関心事項であり、外交的手段によって平和的解決を図ることが重要であるとの認識で一致した(12年6月28日の日本外務省発表より)。