世界遺産の棚田、危険リストから除外

2012/06/27

フィリピン・イフガオ州棚田群の修復が進展
政府は官民学一体の努力奏功と歓迎

 6月24日から7月6日まで、ロシアのサンクトペテルブルクにおいて、第36回世界遺産委員会が開催されている。そして、フィリピンの棚田が危険遺産リストから除外されることが決定された。


 ルソン島北部イフガオ州の山岳斜面に広がる「フ ィリピン・コルディリェーラの棚田群」は2000年の歴史を有し、その壮大な景観や急勾配の土地を利用して築いてきたイフガオ文化の象徴として、1995年にユネスコの世界遺産に登録された。

 しかし、、棚田を維持する伝統的知識とその人材の減少を背景に、棚田の荒廃が徐々に進行し、 2001年には「危機にさらされている世界遺産リスト」(危険遺産リスト)に登録されるなど、貴重な景観が荒廃しつつあった。日本の棚田と同様に、フィリピンの棚田も、過疎化、高齢化、伝統文化の喪失などの課題を抱えている。

 その後、ユネスコやフィリピン政府、学会、産業界、市民団体などが棚田の修復・保全活動を推進したことで、修復が進み、今回の危険リスト除外という結果となった。フィリピン政府は「官民学一体の努力の結晶」と歓迎の意を表した。

 日本も、様々な修復支援を行ってきた。例えば、日本ユネスコ協会連盟は、2006年から、フィリピン・イフガオ州で子どもたちに棚田の文化を伝えるプロジェクトを実施してきた。

 また、東京電力は、小規模水力発電プロジェクトの実施を通じて、「コルディリェーラの棚田群」の保全に貢献。これは、小水力建設・運転に関する技術ノウハウを活かし、再生可能エネルギーの利用促進を通じて、世界遺産保全貢献に取り組むというものである。
 具体的には、発電出力200kWの小水力発電所を東京電力負担でイフガオに建設、フィリピンエネルギー省へ寄贈。その後、この水力発電所で発電した電気は、現地の配電事業者に売電されることとなり、その収益から設備の維持や管理等に必要な費用を除いた金額が、「コルディリェーラの棚田群」の保全に活用されてきた。

 また、三菱モーターズ・フィリピン(MMPC)は、社会貢献活動の一環として、この棚田修復・保全支援活動を活発化させている。MMPC社員がボランティアとして修復・保全作業に参加するだけでなく、業界や取引先にも参加を呼び掛けている。さらに、著名な写真家による棚田などの撮影やその作品展示を通じての啓蒙活動、また、現地の子供たちへの教材配布などの支援活動を行っている(12年6月28日のフィリピン政府官報などより)。