日本大使館、「フィリピン安全対策」を発表

2012/06/21

日本人の被害例を参考にした犯罪対策など

 在フィリピン日本大使館は、フィリピンにおける安全対策(安全の手引き)を作成、6月21日に同館ウエブサイトに公開した(http://www.ph.emb-japan.go.jp/index_japanese_version.htm)。


 同館では「旅行者に限らず、在留者からも、毎年、強盗,窃盗(スリ、置き引き)、詐欺等の被害や様々なトラブルに遭ったとの報告が寄せられている。 こうした事実をもって,フィリピンの治安が悪化している、日本人を標的にした犯罪が増加しているとは断定できないが,大使館で把握した邦人に関する犯罪被害を検証してみると、古典的な手口と言えるものもあれば、当地において犯罪に遭わないための基本的な心がけ(危険な場所や時間帯を避ける等)を守っていたり、あるいは適切な犯罪防止対策を講じていたりすれば、被害に遭わずにすんだのではないかと思われるケースが少なくない。

 したがって、フィリピンの犯罪の特徴を認識し、日常生活において適切な防犯対策を講じることにより、ある程度、被害を未然に回避することが可能ではないかと思われる。そのため、今回は、当地で日本人が巻き込まれた犯罪被害例を参考として、犯罪に遭わないために留意すべき基本的な諸点を取りまとめた」としている。

 全文は、上記ウエブサイトで閲覧可能となっているが、フィリピンの犯罪の特徴などは以下のように記載されている。

1.フィリピンにおける犯罪の特徴
(1)フィリピン国家警察(PNP )によれば、フィリピン全土には密造銃が 60 万丁以上出回っており、犯罪に用いられているとされている。また,フィリピンは、些細なことで恐喝、強請(ゆすり)、誘拐、殺人等の犯罪を生みやすい社会土壌であることも念頭に入れておく必要がある。

(2) フィリピンで発生する犯罪の特徴 は次のように大別できると考えられるが,日本で発生している同種犯罪と比較して、犯罪の種類にかかわらず、生死にかかわる事態に発展する危険性が常にあることを認識しておく必要がある。
 ア  凶器(特に銃器,刃物等)を用いた犯行
 イ  偶然(行きずり)というよりもターゲットを絞った犯行
 ウ  フィリピン人との何らかのトラブル(人的/怨恨,商売等)に起因した犯行
 エ  単独犯というよりも組織的な犯行
 オ  外国人コミュニティーにおける自国民による自国民に対する犯罪(恐喝,強請等)

2 フィリピンにおける特徴的な犯罪の形態と日本人の被害
 フィリピン国家警察統計資料(犯罪統計)によれば、 2011 年(暦年)のフィリピン全土の犯罪件数自体は 2010年(暦年)より 23%減少しているとのことであるが, 2011年(暦年)にマニラ首都圏で発生した犯罪はフィリピン全体の約 20%に達しこのうち,殺人事件が約8%,強盗事件が約 29.3%、強姦事件が約 10.3%を占め、フィリピン全人口の約1割が居住しているマニラ首都圏における犯罪は他の地域と比較して高く、かつ凶悪なものとなっている。

 一方,同統計資料によれば、殺人、強盗、傷害事件等の犯罪で犯人が逮捕されるのは全体の 21%程度に留まっている。また,治安当局の規律は必ずしも高いとは言い切れないし、 2010 年 8 月に発生したマニラ市内観光名所(リサール公園)でのバス乗っ取り事件の際にも見られたとおり、事件対処能力についても不安を払拭するまでには至っていないというのが残念ながら現実である。

3.その他
 犯罪とは言えないがフィリピンには相手が日本人と分かると法外な料金を請求 する「悪徳」と呼ぶに相応しい各種業者(一部の弁護士や葬儀社等)が存在し、このような 同業者との間でトラブルになったとして大使館に相談に来る日本人も見られる。

 まt、フィリピンでは,日本のように個人情報に細心の注意を払うことはなく,個人情報 保護法に類する法律もない。例えば,フィリピン人と婚姻する場合には、婚姻 許可証を申請する市役所に一定期間申請者の氏名・住所などが掲示されたり、滞在許 可の申請・許可状況が入国管理局のホームページに掲載されたりしている。   また、何らかの事件・事故に巻き込まれた場合でも、警察が被害者氏名等を一方的 に公表してしまうことが少なくないので、思わぬ形で氏名が公表されてしまう ことで、犯罪に利用されてしまうのではないかとの強い懸念がある(12年6月21日の在フィリピン日本大使館発表より)。