JICA、フィリピンでもクリーン・エネ開発を継続支援

2012/06/19

資金・人・技術的協力等で世界第2位の地熱発電国へ

 6月20日~22日に、ブラジル・リオデジャネイロにおいて、連持続可能な開発会議(リオ+20)」開催される。国連は、2012年を「すべての人のための持続可能なエネルギー国際年」と定めており、持続可能なエネルギーについて国際的な議論が建設的な形で進められることが期待されている。


 国際協力機構(JICA)はこれまで、再生可能エネルギー、省エネルギーといった分野の国際協力で、大きな実績を残してきた。再生可能エネルギーに関しては、地熱、風力、太陽光、水力などの分野で技術協力、円借款、無償資金協力を組み合わせた協力を行ってきている。

 例えば、フィリピンでは、1980年代から地熱資源開発に携わる技術者を日本で養成しているほか、地熱発電所の建設に必要な資金を円借款で供与するといった支援を行ってきており、フィリピンは今や、約1,900メガワットという世界第2位の発電設備容量を誇る地熱大国である。また、同国の地熱による発電量は、総発電量の約15パーセントを占めるに至っている。

 日本は、1970年代の2度にわたる石油危機をきっかけに社会全体が一体となってエネルギー効率の向上に努めた結果、現在では世界最高の省エネルギー水準に達している。エネルギー需要が伸び続ける開発途上国では、省エネルギーに対する取り組みは必要不可欠であり、日本の省エネルギーの知見に期待を寄せる国は多い。実際、これまでにアジア、東欧、中東諸国の省エネルギー政策・制度の改善や技術の向上に向けた協力が数多く行われてきた。

 エネルギー自給率が約6割(2009年)のフィリピンでは、技術協力として「省エネルギー計画調査」(2011年1月~2012年3月)を実施。JICAがフィリピンの省エネルギー法策定のためのアドバイスを行った。エネルギー管理制度や省エネラベリング制度など、日本で実績を挙げた政策・制度をフィリピンの状況に合わせた形で提案し、それをエネルギー省が法案に反映させるという形で協力が行われ、現在はJICAの提案を基にフィリピン政府と国会が、法案成立に向けた具体的な検討を進めている。法案成立後は、その実践を支援する技術協力プロジェクトの実施も検討されている。
 なお、エネルギー管理制度とは、大口のエネルギー消費者に対して、エネルギー消費量の報告や省エネルギーに関する取り組みの計画、実施、評価を義務付け、産業界全体の省エネルギーを推進する仕組み。
 また、省エネラベリング制度とは、家電製品などの販売時にエネルギー消費効率を示すラベルの張り付けを義務付け、高効率機器の普及を推進する仕組みである。

 この6月4~8日には、国際会議「アジアクリーンエネルギーフォーラム 2012」がフィリピンの首都マニラで開催され、JICAフィリピン事務所の濱口勝匡氏が、フィリピンでの再生可能エネルギーや省エネルギーのための協力について発表した。

 省エネルギー分野の協力である「省エネルギー計画調査」については、日本の省エネ法制度を紹介すると同時に、フィリピン産業界の正確なエネルギー消費量の把握や省エネへの取り組みの義務化など、同国の省エネルギー政策の課題と、それに対するJICAからの具体的な提案を報告。多くの原発が停止する中、高いレベルの省エネを実践している日本の政策、制度や技術に対する関心は想像以上に高く、参加者からは「どうしたら省エネの取り組みを加速させられるか」、「法律も大事だが、いかに実践するかも重要という点に同意する」といった質問やコメントが相次いだ。
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 また、再生可能エネルギーの協力として、現在、案件形成が進むJICAの無償資金協力「イフガオ州小水力発電計画」に関連し、フィリピンの地方自治体による小水力開発についても報告。フィリピン北部のイフガオ州にあるコルディエラの棚田は、世界遺産に登録されているが、都市部への人口流出などから荒廃が進んでいる。そこで、フィリピン政府とイフガオ州政府は、豊富な水資源を生かした小水力発電を導入し、電力を売却した収益で棚田を保全する計画だ。発表では、この取り組みを事例に、地方自治体による再生可能エネルギー開発の有効性を説明し、参加者からは「水資源が少ない場所でも、太陽光発電ならどこでもできる」、「地方自治体に予算がないのは確かだが、地方債を発行して資金を調達するのも一案」といった建設的なコメントが寄せられた。

 世界遺産に登録されているイフガオ州の棚田では、小水力発電による電力の売却益で保全する計画が進められている。再生可能エネルギー、省エネルギーという点では「課題先進国」ともいえる日本。JICAは今後も日本が実践を通じて獲得してきた知恵を開発途上国と共有すべく、クリーンエネルギーに対する取り組みを強化していく方針である(12年6月19日のJICAトピックスより)。