第1四半期GDP成長率、6.4%へ急加速

2012/05/31

ASEANで最高水準、6四半期ぶり高成長
政府年間目標5~6%を上回るペースに
サービス8.5%、鉱工業4.9%、農林水産1%
 

国家統計調整委員会(NSCB)は5月31日に、2012年第1四半期のフィリピン国民経済計算統計(2000年基準)を発表した。

 2010年までこの統計の尺度は、国内総生産(GDP)と国民総生産(GNP)の2本立てとなっていたが、2011年発表からGDPとGNI(国民総所得)という体系に変更された。さらに、GDP統計などにおける物価変動を除いた実質ベース産出のための基準年が従来の1985年から2000年へと変更されている。

 {2012年第1四半期動向}
 2012年第1四半期GDP成長率(実質ベース:以下同様)は6.4%で、前期の4.0%(改定値:以下同様)及び前年同期の4.9%から大幅に改善。また、市場の事前推定コンセンサス4.8%を大幅に上回った。インフレ沈静化傾向、セクター別構成比の4割超を占めるサービス部門の高成長、堅調な家計消費支出、輸出の持ち直しなどが寄与した。なお、季節調整済み前期比成長率は2.5%で、前年同期のマイナス0.3%、前期のマイナス1.0%から回復した。

 国家経済開発庁(NEDA)によると、フィリピンの第1四半期GDP成長率6.4%は、中国を除く近隣諸国やASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国の中で最も高い成長率である。また、2010年第3四半期の以来6四半期ぶりの高成長となった。また、政府の2012年年間成長率目標5~6%を上回るスタートとなった。

 一方、GNI成長率は5.8%となり、前期の4.5%及び前年同期の3.5%から改善。OFW送金など海外からの純所得(NPI )が回復したことによる。

 セクター別成長率は、鉱工業が4.9%で前年同期の7.3%からは鈍化したが、その後の不振からは持ち直した。また、サービス産業は8.5%成長で、前期の5.9%、前年同期の3.6%から急加速した。一方、農林水産業は1.0%の成長にとどまったが、前期のマイナス2.5%からは回復に転じた。

 支出項目別伸び率は、家計最終消費支出が6.6%で前期の6.4%、前年同期の5.9%を上回った。また、輸出は7.9%増で前期のマイナス8.2%、前年同期の3.9%から回復した。また、GDPのマイナス勘定となる輸入がマイナス2.6%と低迷したのもGDP成長率を高める結果となった。

 なお、2011年の統計が改定されている。年間ベースでは、2011年GDP成長率が3.9%(速報値は3.7%)、GNI成長率が3.2%(速報値2.6%)へと上方改定された(11年5月30日の国家統計調整委員会資料などより)。

セクター・支出項目別
GDP実質成長率(前年同期比)等の推移(2000年基準:単位:%)

項目 構成比 四半期成長率  年間成長率
12年 11年 12年 10年 11年
四半期 1Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 年間 年間
GNI(国民総所得) 100.0 3.5 2.4 2.2 4.5 5.8 8.2 3.2
GDP(国内総生産) 75.0 4.9 3.6 3.2 4.0 6.4 7.6 3.9
NPI(海外からの純所得) 25.0 -0.1 -1.1 -0.8 6.2 4.0 10.0 1.0
セクター別内訳
  農林水産業 8.7 4.4 8.3 2.2 -2.5 1.0 -0.2 2.7
      農林業 7.1 6.3 11.7 4.3 -2.0 2.1 -0.1 4.5
        米 1.6 15.6 13.2 19.7 -8.7 -1.1 -2.4 5.9
        コーン 0.6 19.4 71.5 -6.0 -9.7 5.4 -8.9 9.5
      水産業 1.6 -3.1 -2.4 -6.6 -4.8 -3.8 -0.5 -4.1
  鉱工業等 24.2 7.3 -1.4 0.1 3.4 4.9 11.6 2.3
      鉱業 0.8 32.2 8.6 4.1 -16.3 -11.0 11.4 7.0
      製造業 17.2 8.1 5.8 2.0 3.3 5.7 11.2 4.7
      建設 3.6 4.2 -24.2 -8.8 8.1 3.6 14.3 -7.3
       光熱ガス 2.6 -0.6 -1.4 1.7 2.9 8.0 9.9 0.6
  サービス産業 42.1 3.6 5.6 5.2 5.9 8.5 7.2 5.1
      運輸倉庫通信 6.1 4.2 4.2 4.6 4.1 9.0 1.0 4.3
      商業・自動車修理等 11.6 2.8 2.5 4.5 3.4 8.9 8.4 3.3
      金融 5.1 6.4 11.6 1.4 1.5 8.8 10.1 5.2
     不動産等 8.0 6.2 8.4 8.7 13.6 7.9 7.5 9.3
支出別内訳
  家計最終消費支出 52.6 5.9 5.6 7.4 6.4 6.6 3.4 6.3
  政府最終消費支出 8.3 -15.8 6.0 8.9 7.6 24.0 4.0 1.0
  資本形成 12.9 36.1 -10.1 21.8 -3.8 -23.5 31.6 8.1
      固定資本 16.6 12.5 -9.5 1.0 -2.4 2.8 19.1 0.2
        建設 5.5 8.1 -21.5 -8.6 3.9 0.3 17.5 -6.2
        耐久設備 9.3 17.2 2.6 9.3 -7.9 3.6 25.5 5.2
  輸出等 37.6 3.9 0.2 -11.9 -8.2 7.9 21.0 -4.2
  輸入等(控除勘定) 35.6 11.2 -1.0 -1.8 -6.2 -2.6 22.5 0.2
(出所:国家統計調整委員会資料より作成)

GDPとGNIの実質成長率推移(基準年2000年:単位%)
99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年
国内総生産(GDP) 3.1 4.4 2.9 3.6 5.0 6.7 4.8 5.2 6.6 4.2 1.1 7.6 3.9
国民総所得(GNI) 2.7 7.7 3.6 4.1 8.5 7.1 7.0 5.0 6.2 5.0 6.1 8.2 3.2
(出所:国家統計調整委員会資料より作成)