比地上デジタルTV、日本方式採用へ前進か

2012/05/24

科学技術省が日本式支持報告書提出との報道

 

  2010年6月11日に、フィリピン国家電気通信委員会(NTC)は、フィリピンにおける地上デジタルテレビ放送(地デジ)方式の規格として日本方式(ISDB-T方式)を採用する規則に署名した。

 これが実現すれば、 フィリピンは、日本以外のアジアで最初に日本方式を採用する国になるはずであった。ちなみに、フィリピンは2015年にデジタル方式への変更完了を目標としている。

  しかし、NTCの署名後に、一部に欧州のDVB改良方式が高パフォーマンスであるとの評価が高まり、この欧州方式採用をもう一度検討する動きが強まった。そのこともあって、現在でも、大統領による日本方式採用との最終署名には至っていない。

 5月24日付けフィリピン各紙電子版によると、フィリピン科学技術省は技術的な観点から、日本方式採用を支持しており、数週間前に、アキノ大統領宛てに、日本方式採用を軸とした地上デジタルテレビ放送への変換計画書を提出したとのことである。科学技術省は、日本方式の扱いやすさ、セットトップボックスのコストの安さなどを評価している。

  なお、日本方式はハイビジョン放送と同時に移動端末向け放送サービス(ワンセグ)が提供可能であること、干渉に強く移動中の車内や山がちな場所においても良好に受信ができることなどが評価され、NTCの日本方式採用規則署名に至った。 海外では、これまで、中南米のブラジル、ペルー、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ、エクアドル、コスタリカ、パラグアイ、モルディブなどが日本方式を採用、あるいは採用を決定している。
 
 国際標準となっている地上デジタルテレビジョン放送の規格には、日本方式(ISDB-T方式)、欧州方式(DVB-T方式)、米国方式(ATSC方式)の3方式が存在する。日本方式は他の方式に比べて、上記のような技術的な優位性があること、また携帯端末向け放送(ワンセグ)とハイビジョン伝送が一つの送信機で伝送可能であり、全体のコストが安くなり経済的であること等の優位性がある。
 ただし、日本方式は技術的には優れているが標準化競争に出遅れた。日本方式はこれまで上記のような南米諸国しか採用例がなく、欧州、豪州、インドなど30カ国以上で採用されている欧州方式、北米や韓国という大市場を制した米国方式に比べ見劣りがしていた。

 このような状況下で、フィリピンNTCが日本方式採用規則に署名したのは、官民の積極働きかけ、技術的優位性、島国で災害が多いという日本との類似性などが背景である。決定的な要因は日本がセットトップボックス(チューナボックス)の低コスト化に成功したこととも報じられている。