イメージほど悪くないフィリピンの治安
2012/05/17
日商サイトに西澤JCCIP事務局長執筆
普通に行動すれば問題ないとの見解も
日本商工会議所ウエブサイトの5月11日付けのニュースライン海外情報レポートに、「イメージよりもまずはご自身の目で(フィリピン)」という記事が次のように掲載されている。執筆者はフィリピン日本人商工会議所の西澤 正純事務局長である(以下、ほぼ原文のまま)。
<不安視されるフィリピンの治安>
最近でこそ、ポストBRICsを担うVIP(Vietnam, Indonesia, Philippines)の一つとして注目され、大手日系製造業の相次ぐ進出決定により活況を呈しているフィリピンであるが、他のASEAN諸国と比べ、どうしても治安が悪い・危険というイメージが先行し、進出に二の足を踏まれている企業も多いと思われる。実際、治安・安全面の問題は、フィリピンへの進出を考えて当地を訪問される企業から多く寄せられる質問である。
たしかに、日本の感覚から言えば、安全とは言い切れないが、それは他の外国とて同じことである。フィリピン国内には、外務省の渡航情報(危険情報)で「渡航の延期をお勧めします」という地域が存在するし、マニラ首都圏やセブの市街地でも、銃器の所持が認められているため、ショッピングモールやオフィスビル、コンドミニアムの前には銃器を所持したセキュリティガードがいる。また、日本で報道されているような凶悪犯罪も実際に起きていることは事実ではある。しかし、日系企業の駐在員の職場・生活環境が他の国と比べて特別に危険かというと、必ずしもそうではないのではないかと考えている。
さる3月下旬に大阪府、JETRO大阪本部等が開催したフィリピン投資セミナーでは、昨今のフィリピン投資に対する関心の高さを反映し、140名以上の参加があった。参加者の大きな関心事の一つは、治安と安全面の問題であったが、パネラーとして参加したフィリピン駐在歴12年の藤井伸夫氏(当所副会頭)は、これまでに危険な目に遭ったことはなく、駐在員が普通に生活・行動していれば何ら問題ないと強調した。かつて大手製造業の経営者であった藤井氏は、現在はカビテ工業団地投資家協会(CEZIA)会長として、企業規模に関わらず、フィリピンで事業を行う多くの日系企業の駐在員と接点を持つが、実際に、駐在員の間で治安・安全面での懸念が話題にのぼることはそれほど多くはないという。
<韓国ではイメージが良いフィリピン>
一方、韓国では、フィリピンに対するイメージが日本と正反対である。安価に英語を習得する留学先として幅広い世代に受け入れられているほか、セブ島やボラカイ島などは、日本人にとってのハワイのような感覚で新婚旅行先として大変人気がある。統計を見ても、在比在留登録者数が1万8,000人の日本に対し、韓国は12万人、訪比者数も日本の37万5,000人に対し、韓国は2.5倍の92万5,000人に達する。
もっとも、韓国からフィリピンへの訪問客はもともと多かったわけではなく、2000年代初頭にフィリピンへ留学した人の口コミ等により、年々増加しているのである。フィリピンへの進出を考えている企業がおられたら、まず当地を訪れていただき、自身の目で今、お持ちになっているフィリピンのイメージと実際のフィリピンとの違いを感じていただきたい(11年11月10日の日本商工会議所ニュースラインより)