サンミゲル・ビール、自主的上場廃止も選択肢に

2012/05/12

浮動株式比率基準(最低10%)未達成、対応策協議中
現在のキリン出資比率48.39%、浮動株式比率は0.6%

 サンミゲル・ブリュワリー(サンミゲル・ビール=SMB)は依然、フィリピン証券取引所(PSE)の浮動株式比率基準(最低10%)未達成であり、速やかな達成が必要となっている。そして、どのような手段をとるかを検討している。  


 サンミゲル・ビール(SMB)は、2008年にサンミゲルの国内ビール事業スピンオフで発足、PSEに上場した。一昨年にはサンミゲルの海外ビール事業も取得している。さらに、洋酒事業を取得して総合酒類企業となる可能性もある。

 このSMB株式保有比率は、2012年3月末時点で、サンミゲル約51%、キリン・ホールディングス(キリン)約48.39%となっている。この大株主2社合計の保有比率は99.39%に達しており、浮動株式比率は僅か0.6%。この状況は、現時点でも変わっていないと見られる。

 PSE以前は、浮動株式比率基準(最低10%)に対してはかなり寛容であったが、一昨年ごろからこの基準を遵守するよう強く要求し始め、昨年11月30日までの達成を指示した。2012年は猶予期間となるが、2012年以内に達成しないと上場廃止等の可能性も出てくる。

 このような状況下で、SMB大株主のキリンとサンミゲルは、SMBの浮動株式比率基準達成のための方策を討議している。

 現時点では具体的な方策は決定していない。優先株発行、第3者割当増資、大株主両社が保有株式を同数あるいが同率売り出し、あるいはサンミゲルのみが保有株式を売り出してキリンが筆頭株主になるなど様々な可能性が考えられる。

 サンミゲルのラモン・アン社長は、このほど「これまでもサンミゲルとキリンはSMBの浮動株式比率基準達成の方法を協議してきた。6月にも協議が予定されており、早い時期に両社が保有SMB株式売り出しなどの方法で合意出来ればと考えている」と表明した。
 そして、「浮動株式比率基準の達成方法が見いだせなければ、SMBはPSEからの自主的上場廃止という道を選択することになるであろう」ともコメンした。

 この問題に関しての進展状況を問うPSEに対して、SMBは5月11日に「SMBは依然、大株主のサンミゲルとキリンとの間で協議を続けている。具体策が決定されれば、速やかかつ適正な情報公開を行う」と回答した。

 キリンは、サンミゲル本体への出資というかたちでフィリピンに進出した。当時はサンミゲル自身が国内ビール事業を行っていた。しかし、その後、国内ビール事業部門をSMBとして分社化、SMBは2008年5月12日にフィリピン証券取引所(PSE)に上場された。したがって、キリンは2009年前半に、保有していたサンミゲル株式6億2,867万6,675株(発行済株式総数の約19.91%)を売却、そのかわりにSMB社株式約48.39%を取得したという経緯がある。

 なお、サンミゲルの不動産子会社サンミゲル・プロパティーズ(SMP)と食品子会社サンミゲル・ピュアフーズ(PF)に関しても、PSEに上場しているがサンミゲルが大半の株式を保有しており、浮動株式比率は両社ともに0.1%に過ぎない。両社ともに、早期に浮動株式比率を10%以上に引き上げる必要がある。有効な手段が見いだせなければ、この2社も自主的上場廃止という選択をせざるを得なくなる。
 PFに関しては、既に、サンミゲルの保有株式売り出しによる浮動株式比率10~15%達成の目途が立っている。一方、SMPは対応を検討中である(12年5月11日のフィリピン証券取引所回覧3632、3638-2012号などより)。(12年5月11日のフィリピン証券取引所回覧3638-2012号より)。