上場銀行のEIBが経営破綻、27日に閉鎖

2012/04/28

管財人の預金保険公社(PDIC)、5月から預金払い戻し

フィリピンのペイオフ(預金保護)上限は50万ペソ(約95万円)

中央銀行金融委員会は、4月27日に、「経営破綻した中堅銀行エクスポート&インダストリーバンク(EIB、輸出産業銀行)を、預金保険公社(PDIC)の管轄下に置いた。今後、PDICが管財人として、EIBの資産管理や預金払い戻しなどを行う」と発表した。
 
 

 中央銀行は、長らく経営不振を続けてきたEIBが、ついに換価可能資産不足による債務返済不能状態に陥ったと判断した。EIB自身も、中央銀行に対し、4月27日からのバンクホリデー(閉鎖)宣言やその業務の中央銀行への引き渡し意向を通告した。これらにより、中央銀行はEIBの業務停止、PDICによる管轄などを決定した。

 EIBの本店は首都圏マカティ市のエクスポートバンク・プラザ(ブエンディア通りとパサイ道路のコーナー)で、店舗数は50店。最新の証券取引委員会(SEC)への届け出によると、2011年末の預金口座数は5万0,092、受入れ預金残高は159億8,000万ペソとなっている。

 PDICは5月からEIBの預金払い戻しなどに着手する。フィリピンのペイオフ(預金保護)は上限50万ペソである。EIBの5万0,092口座のうち、1万ペソ以下の少額口座が62%を占めている。この1万ペソ以下の預金口座保有者への払い戻しは、基本的には複雑な申請手続きなしに比較的早期に実施される。1万ペソ以上の場合は、5月2日に開始される預金者フォーラム時に配布される申請書による払い戻し手続きが必要であり、払い戻し時期は7月以降となる。

 なお、EIBはフィリピン証券取引所(PSE)に上場している。EIBは、1990年台後半に預金取り付け騒動で閉鎖を余儀なくされたアーバン・バンクグループの資産などを引き継いでおり、アーバン・バンクと同様に長らく経営不振が続き、2005年頃からは企業再構築プログラムなどに着手した。

 EIBは大手銀行への身売り交渉なども続けてきた。2010年には、中央銀行が、最大銀行BDOユニバンク(BDO)によるEIBの全資産と受け入れ預金を含む全負債取得に関して基本承認するにまで至ったが、結局立ち直れなかったことになる。

 この資産売却交渉などにともなう株式の投機的な売買回避や投資家保護という理由で、EIBはPSEに対して、2008年5月に自主的EIB株式売買停止を申請、PSEもその申請を受け入れ、EIB株式の長期売買停止措置が現在まで継続されてきている(2008年10月~2009年5月14日までは一時的に取引が再開されたが、それ以降再び売買停止となっている)。
 
 投資家保護のためと強調しながら、企業側の都合でその株式売買停止措置を継続させる「自主的売買停止措置」は大きな問題を有している。今回も、3年間も自主的売買停止措置を継続させ、その結末が経営破綻では投資家保護に逆行した動きであるといえる。

 中央銀行は、EIBの経営破綻・閉鎖に関して「フィリピンの銀行業界は、自己資本比率(CAR)が17.43%、中核自己資本(TIER1)比率は14.23%(2011年9月末の連結ベース)であるなど財務基盤は強固であるし資金量も豊富である。EIBの総資産は全体の0.3%を占めるに過ぎず、その破綻の悪影響は軽微である」とコメントした。

 しかし、EIBは曲がりなりにもPSE上場企業である。最近のフィリピン株式市場の上昇は金融セクターが主導しており、EIBの破綻が心理的に悪影響を及ぼす懸念がある。

 なお、フィリピンには金融機関数が多すぎると指摘されており、合併や淘汰の動きが続いている。今年3月にも、中央銀行は経営破綻したバンコ・フィリピーノ・セービング&モーゲージバンク(BF)を、預金保険公社(PDIC)の管理下に置くことを決定している。BFへの預金者は17万7652人と報告されている(12年4月27日のフィリピン中央銀行や預金公社発表などより)。