フィリピンの不動産企業、環境悪化でも最高益続出

2012/04/19

今年も業績続伸見込み、設備投資額もさらに増額へ

 

 フィリピン証券取引所(PSE)上場不動産企業の2011年決算発表が出揃った。国内外の景気鈍化、年前半のインフレ率上昇やそれにともなう金利上昇などの環境悪化にも関わらず、業績は総じて好調であった。2012年に関しても楽観的な予想が多い。

 まず、当地最大の不動産企業であるアヤラランドの2011年の収入は前年比17%増の442億ペソ、報告純利益は同29%増の81億ペソ、株主帰属純利益は同31%増の71億4千万ペソと二桁増収増益決算、2年連続での史上最高益更新となった。
 2011年の設備投資額も前年比49%増の299億ペソと大幅増加、史上最高となった。そのうちの53%が住宅開発に充当された。2012年の設備投資額は同24%増の370億ペソとさらに積極化する方針である。

 特にコンドミニアムに強みを有するメガワールドの収入は前年比39%増の286億ペソ、純利益は同60%増の81億6000万ペソと大幅増収増益、そして最高益更新となった。
 昨年末に発表された不動産コンサルタント企業コリアーズレポートにおいても、2010年完工、及び2011年~2016年の完工予定(2011年第3四半期までに着工したプロジェクト分)のコンドミニアム総戸数のうち、メガワールドが18%のシェアを占め、業界トップとなっていると報告されている。
 メガワールドは2012年も積極戦略を貫く方針であり、上半期だけで新たに11のプロジェクトをスタートさせる。そして、2012年年間の設備投資額を250億ペソと見込んでいる(メガワールドウエブサイトなどより)。

 ビリャール上院議員傘下のビスタランドの純利益は前年比17%増の35億3,000万ペソに達し、史上最高益となった。フィリピンでは現在、低中所得者層にも持家志向が高まっており、ビスタランド・グループの得意とする低価格住宅需要が拡大していることなどで好決算となった。
 2012年は、景気回復などビジネス環境が好転しそうなことから収入、純利益ともに20%程度拡大すると見込んでいる。設備投資額は150億ペソを予定している。


 フィルインベスト・ランド(FLI)の収入は前年比18%増の96億5,300万ペソながら、最終純利益は同0.4%減の29億4,034万ペソにとどまった。 ただし、一時的損益を除外したコア純利益ベースでは同21%増であった。すなわち、実質21%増益決算であったといえる。中低価格住宅取得意欲が根強いこと、コールセンター・BPOビル需要拡大などを背景に実質二桁増益決算となった。

 センチュリー・プロパティーズ・グループ
(CPG)の収入は前年比53%増の47億ペソ、純利益は同381%増(約4.8倍)の8憶6,600万ペソに達した。株主資本利益率(ROE)は23.8%に達し、業界最高水準となった。
 CPGの2011年の予約販売額は同129増の184億ペソに達していることなどから、2012年の業績も続伸する見込み。CPGは、2012年の純利益は2011年に比べ倍増以上となると見込んでいる。

 急成長を続けるアンカーランドの純利益も前年比49%増の8億4,200万ペソへと大幅増加、最高益更新とともに、2007年のPSE上場以来の連続増益を継続した。2007年の純利益は1億0300万ペソ、2008年が2億3600万ペソ、2009年が3億7300万ペソ、そして、2010年が前年比63%増の5億6600万ペソと急増してきている。

 決算期は異なるが、ゴコンウェイ・ファミリーのロビンソンズ・ランド(会計期末9月)も、収入が同12%増の126億ペソ、純利益が同11%増の40億ペソと堅調な業績であった。

 以上のように2011年の不動産企業の業績は、大手、中堅ともに総じて非常に好調であり、2012年も業績続伸と予想、設備投資額をさらに増額する企業が多い。

 一方、金融業界の2011年の業績も好調で最高益更新が続出、2012年も続伸を予想する企業が多い。したがって、最近は不動産株と金融株がフィリピン株式市場の史上最高値更新の主役となっている。
 ちなみに、フィリピンの代表的な株価指数であるフィリピン証券取引所株価指数(PSEi)は2012年第1四半期に16.8%上昇した。セクター別株価指数パフォーマンスは、トップが金融の30.44%上昇、そして第2位が不動産の27.04%上昇となっている(各社の決算発表、アニュアル・レポート、PSE取引記録などより)。

2012年第1四半期のセクター別株価指数上昇率など(3月30日時点)
項目 3月30日終値 年初からの上昇率 PER(株価収益率) 昨年の上昇率
フィリピン証券取引所指数 5,107.73 16.83% 18.34倍 4.07%
全株指数 3,458.73 13.59% 24.45倍 1.28%
金融セクター指数 1,263.83 30.44% 15.46倍 0.77%
工業セクター指数 7,815.83 10.48% 18.44倍 -2.02%
持株会社セクター指数 4,243.85 21.13% 16.46倍 3.39%
不動産セクター指数 1,881.71 27.04% 22.46倍 -6.40%
サービスセクター指数 1,751.93 8.39% 20.46倍 1.63%
鉱業・石油セクター指数 25,978.59 10.52% 17.75倍 68.52%
(出所:フィリピン証券取引所資料より作成)